アメリカの実店舗で用いられている4つの最新インストアテクノロジー
Eコマースの分野はここ最近急速に発達を遂げていますが、驚くべきことにアメリカ国民の90%以上はいまだに実店舗で買い物をしているというデータも出ています。この事を踏まえて、AmazonやWarby ParkerなどのEコマース大手は最近になって実店舗ビジネスを展開し始めました。
Warby Parkerの設立者デイビット・ギルボア氏は、全ての小売業者がオムニチャネルでのビジネス展開を考える時期に来ているとし、「この業界の将来はオンライン・オフライン両方を合わせた形になっていくのです」と力説します。
そこで、実店舗とデジタルコマースのギャップを埋めるべく、様々なスタートアップ企業がスマート試着室からロボット店員に至るまで多くのテクロノジーを駆使したサービスを構築してきていますので、最新の小売テクノロジーならびに開発した会社について、いくつかの例を紹介します。
1. スマート試着室:Oak Labs
ニューヨークに拠点を構えるOak Labsは、Oak Mirrorと呼ばれるタッチスクリーンの鏡を開発しました。具体的には試着したい商品を持って試着室に入ると、近距離無線機能が作動して在庫情報が表示されるほか、別の商品を店員に持ってきてもらうよう依頼したり、試着室内の照明調節、またはおススメ商品の表示なども可能になっています。
2015年11月時点で、ニューヨークのラルフローレン5番街通り店がこのOak Mirrorを採用しており、Oak LabsのCEOヒーリー・サイファー氏は「例えば、どの商品がより頻繁に試着室に持って行かれているにも関わらず売り上げに結び付いていないか、ということが簡単に分かるようになっています。そうすると、その商品は見た目は良いがサイズ感が悪いなどといったことに気づくことにもなり、こういったデータは基本的な部分で小売業者の業務運営方法を変えることにつなげることができるのです」と話します。
2. デジタル店員: Fellow RobotsならびにSimbe Robotics
Fellow Robotsはこれまでに多くのFortune 500にリストアップされた企業と提携して、ロボットによるサービスを小売販売シーンに送り出してきました。2016年秋には、Lowe’s社と提携して店舗内で商品が陳列されている場所を知らせるロボット、LoweBotを開発しましたが、このロボットはLowe’sの11店舗に配置され複数の言語を話す優れものです。
「こういったサービスは小売業界の歴史上常に実現が待たれていましたが、これまではテクノロジーが追い付いていませんでした」とLowe’sの代表、カイル・ネル氏は話します。
一方、シリコンバレーのスタートアップ企業Simbe Roboticsも店舗アシスタントロボットを開発し、商品をスキャンして価格が間違っていないか、在庫は十分あるかなどをチェックできるような機能を備えています。Tallyと名付けられたこのロボットは、現在サンフランシスコのTargetの各店舗で実用テストが行われています。
「テクノロジーは今後も小売業界に革命をもたらしていくでしょうし、我々Targetも将来的にはイノベーションを活用してビジネスを展開していく事になります」とTarget戦略室長、キャシー・カール氏は述べます。
こういったイノベーションへの取り組みの一環として、Targetは先ごろスタートアップ奨励組織のTechstarsと組んで、供給チェーンからデータ分析、さらに店舗内の新しいデジタルサービスに至るまで、小売業界にインパクトを与える可能性を持ったスタートアップ企業に対し、経済面と実践面でサポートを開始しています。
3.拡張・仮想現実ツール:Augment ならびにInContext Solutions
拡張・仮想現実ツールの登場により、小売業者は実際に販売コンセプトを採用する前にリアルな形でテストしてみることが可能になりました。
例を挙げると、パリに本拠を置くスタートアップ企業Augmentは、L’Oreal、Coca-Cola、そしてGeneral Millsといった企業に対して、拡張現実ツールを活用することで商品ディスプレイや自販機などが実際にはどのような雰囲気に仕上がるかを事前に提示するサービスを提供しています。
また、シカゴのスタートアップInContext SolutionsはNestle、Kellogg’s、そしてWalmartと提携して、マーケティングアイデアをビジュアル化させたり仮想現実の中で新しいアイデアを買い物客に体験してもらい、実際にそのサービスを採用するかどうかのテストを実践しています。さらに昨年には、Intelとのコラボを通して小売業界用の新しい仮想現実ツールを開発することを発表しています。
「Intelでは、仮想現実は小売・製造業界に大きな一石を投じる可能性を持つと信じており、InContextのプラットフォームは仮想現実ならびに関連するテクノロジーがこの業界にもたらす価値の大きさをはっきりと見せてくれています。従って、我々は仮想現実の最先端を行くInContext社とタッグを組めることに非常に喜んでいます」とIntelの小売部門担当主任、ジョー・ジェンセン氏は話します。
4.店舗内ファイナンスシステム: Divido
スタートアップ企業Dividoは、従来のファイナンス業界に新しいサービスを提供し、特に自動車販売業界に初めてファイナンステクノロジーをもたらすことに成功しています。同社のサイトによると、自動車を購入する際に支払いを一定期間に分割して支払うことを可能にし、同時に販売側は最初にまとめて全額受け取ることができるサービスを提供しているとのことです。同社のサービスを利用するには、店舗内、オンライン、電話越し、またはメールを通して簡単に登録することができます。
「その場で車が購入できるかどうかという大事な要素を持っているにもかかわらず、自動車ファイナンス業界は、自動車関連業界のその他の分野に比べて最近の進歩が大幅に遅れていました」とBMW Group Financial ServicesのCEO、マイク・デネット氏は説明します。
「この業界は大幅改革を受け入れる時期に来ており、我々が選び抜いたスタートアップ企業は、多くの消費者にとって自動車の購入の仕組みを大きく変える可能性を持ったシステムを開発しているのです」(同氏)
この記事はMust-Watch In-Store Retail Tech for Corporate Innovatorsの記事を本ブログが日本向けに編集したものです。