話題のチャットボットは実店舗でどのように活用するべきか
少し前には耳にするどころか目にすることもなかったチャットボット。しかし今では多くの企業に採用され、様々なシチュエーションで活躍、あるいは活躍が期待されている次世代のシステムです。
チャットボットはまだまだ改善の余地のあるプログラムであるとはいえ、現在の段階でも十分に業務に取り入れられる要素はあるということで、実験だけでなく本格的に実務に取り入れ、第一線でチャットボットが業務を遂行するということも増えてきました。
そして実店舗でのチャットボットの活用事例もだんだんと耳にする機会も多くなってきており、チャットボットがリアルタイムでの店舗経営にも効果的な働きをしてくれることへの期待も高まっています。
今回はそんなチャットボットの活用事例も踏まえつつ、どのようにしてチャットボットを実店舗で活用していくのかについての意見をご紹介していきます。
- 親しみやすいチャットボット
- 実店舗での導入も増加傾向に
- チャットボットの特性をどう活かすかがポイント
チャットボットの特徴
自動的に回答してくれるプログラム
チャットボットはいわゆるチャットツール上で動作するプログラムで、あらかじめ想定された問いに対して機械的に適切な回答をユーザーに送信してくれるというものです。
身近な例で言えばLINEやFacebookメッセンジャーを使用する感覚に近く、プログラムと人間が特定のテーマに関してコミュニケーションを取れるという仕組みが作られています。
プログラムは自動的にその場に最適の回答を選択し、相手に送信してくれるため、人間がそのやりとりの面倒をリアルタイムで監視する必要はありません。必要なのは事前の設定のみで、一度システムを構築した後はその通りにコミュニケーションを実践していってくれるのです。
注目の集まるAIチャットボット
現在では人工知能(AI)を搭載したチャットボットも増加しており、機械学習や深層学習を活用したより柔軟なコミュニケーションが取れるように進化しつつあります。
最初は決められた回答しかできないボットでも、学習を重ねていくにつれて回答にも自動的に幅が生まれ、主体的なコミュニケーションを行えるようになることで、もはや人間と変わらない意思疎通が取れるようにもなりつつあるのが現状です。
チャットボットの実店舗活用事例
そんな進化を続けているチャットボットですので、もちろん実店舗でも徐々に採用を始めているケースが国内外問わず現れ始めています。
GR Salad Tokyo
カスタマイズできるサラダで有名なこちらのお店では、購買サービスの「O:der Cognis(オーダーコグニス)」を採用した店舗を一部導入することで、チャットボットを活用していくという方針をとっています。
O:der CognisはAIを導入したチャットボットをデジタルサイネージやレジなどと統合して販売促進を行なっていくシステムで、会話のやりとりなどから顧客のニーズを導き出し、最適の商品を提供できるという仕組みが想定されています。いわゆる「今日のおすすめ」を店側が一方的に判断するのではなく、一人一人の顧客にとって最高のメニューを紹介できる可能性を秘めています。
GR Salad Tokyo以外にも系列店であるウムウムグッドブリトーズやHonzitu NO Osusumeの合計三店舗でO:derが導入されています。
単純にオーダーのための人件費節約だけでなく、AIを導入したチャットボットを採用することで、顧客の満足度向上にも繋げられるというのは、いわゆる券売機とは一線を画す存在であることがわかります。
UNIQLO IQ
販売促進を促すAIチャットボットサービスといえば、「UNIQLO IQ」も注目です。こちらはAIを導入したチャットボットサービスで、顧客一人一人にコンシェルジュを用意することをコンセプトにリリースされたサービスです。
毎週のおすすめコーディネートや季節商品の入荷情報を自分のスマートフォンに連絡してくれるほか、トレンドワードなどから商品検索を行えたり、近くの店舗の在庫情報を確認することも可能です。
あるいは店舗にチェックインした際にも気になる商品のコーディネートを手持ちのデバイスから確認することができたりなど、チャットボットを通じて販売促進につながる施策につなげることができます。
いわゆるオンラインショッピングでのチャットボットとは異なるのは、実店舗とも連動したボットサービスを受けることができるという点です。ネットでの買い物は発送を待たなければいけないというデメリットがあり、今すぐに買いたいという購入意欲を削いでしまう可能性もあるのですが、UNIQLO IQはその購買意欲を失わせてしまう心配もありません。
ECでは難しい「今すぐに欲しい」をリアルタイムの購入にうまくつなげることのできる可能性のある事例と言えるでしょう。
PRIM
こちらはオーストラリアの事例ですが、AI搭載型のチャットボットを備えた自動販売機を開発し、全豪オープンテニス会場に複数台設置したことで話題になりました。
これまでにデジタルサイネージを搭載した自販機をオーストラリアの各地に設置してきたPRIMですが、動画・音声広告やプロモーションに活用できるデジタルサイネージ搭載の自販機は高い評価を集めており、チャットボットとの相性も良いと考えられています。
PRIMのAIチャットボット搭載自販機ではFacebookメッセンジャーを活用したもので、ユーザーは自分のアカウントに自販機上からログインし、販促用ボットとコミュニケーションをとりながら商品の説明を受けるということができるというものです。今回の企画はサプリメント会社のプロモーションとして用意されたもので、ユーザーはボットとの会話の結果からニーズに応じたサプリメントのサンプルやクーポンなどを手に入れることができました。
自動販売機はもはや店舗ですらないのですが、デジタルサイネージとAIチャットボットの組み合わせにより、省スペースでのパーソナルな接客と、実店舗並みの顧客満足度の高い販売を行える可能性を秘めていることがこの企画で広く認知されたことでしょう。
チャットボットを実店舗でどのように導入すべきか
こういった事例からわかるのは、まずはチャットボットがネット上だけでなく、現実の世界でも十分に活躍を期待することができるということです。
機械的な業務はチャットボットでまかなえる可能性も
普段の接客においてもたいていの場合では機械的に受け答えをすることが多く、わざわざ人に任せなくともボットに任せた方が良いこともある、ということが上の事例を参考にすると見えてくるかと思います。
ましてやAIを搭載したボットであれば、接客そのものがマーケティングの材料となり、チャットボットを使えば使うほどに顧客満足度の高い商品提供やサービスを提供できる等可能性もあります。
また、最近では人間の接客を受けるのが億劫であるという人も増えてきました。UNIQLO IQもそうですが、人間ではなく機械に接客してもらうことで、気を使う必要のない実店舗でのショッピングを楽しめるということもあるため、機械特有の冷たさが実店舗で功を奏する点は見逃せません。
無人のコミュニケーションであることもポイント
あるいは売り手が人だとなかなか購入がしにくいという分野も存在します。例えば保険屋法律関係のサービスなど、プライバシーに関わるデリケートなニーズを抱えて店にやってくるという場合には、AIチャットボットに接客してもらった方が満足度は高くなるという見込みもあります。
実店舗の例ではありませんが、ライフネット生命保険はボットによるオンラインでの保険相談を始めたことで、高い集客効果を出すことに成功したという事例もあります。
まとめ
実現にはもう少し時間がかかりそうですが、いずれは完全な無人店舗が大きな集客を集めるようになる業種も誕生することでしょう。
チャットボットは人間ではなく、あくまでも機械です。この点をうまく活用することが、実店舗での導入を成功させる秘訣となることは間違いなさそうです。