不良在庫とは?経営への影響、対策法を解説します
「不良在庫ってなに?余っている在庫のことじゃないって本当?」
と思っている方に向けて記事を書きました。
不良在庫はそこにあるだけで、他の在庫や経営に悪い影響を与えます。今すぐにでも解消しておかないと、場合によっては倒産の原因になることもあるのです。
そこで、この記事では
- そもそも不良在庫とは
- 不良在庫を出さないための対策
- 不良在庫が出たときに、処分する方法
の順に、不良在庫について説明していきます。
ちょっとしたポイントを抑えるだけで、不良在庫が出ない最適な在庫管理は実現させることが可能です。
まずはこの記事で、不良在庫についてざっくりとした概要を押さえましょう!
不良在庫とは
不良在庫とは、売れる見込みがなく、かつ経済的な悪影響がある在庫を意味します。具体的には
- 不良品
- 欠陥品
などです。不動在庫、死に筋在庫、低回転在庫などと呼ばれることもありますね。
デッドストック(単に余っている在庫)と同じだと思っているかたも多いですが、実をいうと不良在庫は「他の在庫に影響を与える」点でデッドストックとは異なります。
不良在庫の例は
- 腐ったミカン(売れない+他のミカンを腐らせる)
- 劣化したジャケット(売れない+他の服に色が移る)
などです。不良在庫そのものに価値がないだけでなく、他の在庫にある価値を減らしてしまうのが特徴ですね。
会計上では資産として扱われるので、一見なにも起こっていないように見えながらジワジワと現金・預金が減っていることもあります。
そのため、不良在庫を置いているばかりに「自社の資金繰りが悪くなっていることに気づかなかった…」ということもあるのです。
知らぬ間に倒産してしまうなど、最悪の事態を防ぐためにも、そもそも不良在庫が出ないような在庫管理をする、また不良在庫が出たとしても正しく処分する必要があります。
以下で、詳しく見ていきますね。
不良在庫を出さないための対策法とは
不良在庫を出さないための方法には、主に
- 適正な在庫の量を保つ
- 在庫を減らす意識を常にもつ
- 在庫回転率を計算する
の3つがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 適正な在庫の量を保つ
適正な在庫の量はどれくらいかをつかんで、その量を保つようにすることが大切です。
具体的には、在庫管理システムを導入します。とはいえ、入庫/出庫/在庫を見える化できるだけでは不十分で、
- 足りない在庫、多すぎる在庫を自動で検知してくれる
など、大量の在庫でも人の手を使わずに管理できるシステムを使うほうがベターです。
「不良在庫が出るのは不安だけど、在庫管理に使う時間がない…」
というかたでも、在庫管理システムがあればスピーディかつ正確に在庫を管理できますよ。
在庫管理システムについてもっと知りたいかたは「倉庫管理システムWMSとは?特徴と導入までの流れを解説」をご一読ください。
2. 在庫を減らす意識を常に持つ
不良在庫は経営に悪い影響を与えることを意識して、常に在庫を減らそうと考える必要があります。
お店を経営していると、つい売上だけに目を奪われますよね。しかし、売上アップよりも、利益(売上から費用を引いたもの)をあげることのほうが、お店の経営にとっては大切です。
在庫に意識が向いていなかったお店のかたは「在庫は減らすもの」という意識を持ってみるだけでも、不良在庫を減らすためのアクションを取れるに違いありません。
3. 在庫回転率を計算する
在庫回転率とは簡単に言うと、一定の期間にお店や企業がもっている在庫が販売される回数のことです。
具体的には「一定期間の売上原価 ÷ 一定期間の平均在庫金額」で計算します。
- 期首の在庫金額:200万円
- 期中の仕入額:1,100万円
- 期末の在庫金額:300万円
だとすると、
- 売上原価=200万円(期首)+1,100万円(期中)-300万円(期末)=1,000万円
- 平均在庫金額=(200万円(期首)+300万円(期末))÷2=250万円
- 在庫回転率=1,000万円(1)÷250万円(2)=4回転
となり、この期間の在庫回転率は4回転です。そして、この数字が大きくなるほど在庫の回転が早い(仕入から売上が上がるまでの期間が短い)ことを意味し、小さいほど在庫の回転が遅い(仕入から売上が上がるまでの期間が長い)ことを意味します。
とはいえ、在庫回転率は早すぎても在庫が切れやすくなり危険です。できれば1ヶ月ごとに在庫回転率を見直して、適切な在庫回転数を保つ必要があります。
まとめると、不良在庫を出さない方法として
- 適正な在庫の量を保つ
- 在庫を減らす意識を常にもつ
- 在庫回転率を計算する
の3つを紹介しました。次は、不良在庫が出たときの対処法をお伝えします。
不良在庫を処分する方法
「不良在庫が出たけど、どうしたらいいのかわからない…」
となる前に、不良在庫を処分する方法を知っておきましょう。
それが
- ふだんの在庫管理を見直す
- とにかく売り切る
- 廃棄してしまう
の3つです。不良在庫が出る根本の原因はふだんの在庫管理にあります。ゆえにひとまず在庫をきちんと管理できているかを見直すことが必要です。
そして、不良在庫が他の在庫に影響を与える前に「在庫処分セール」のような形で売り切ってしまう必要があります。また店舗で売るのではなく、楽天・Amazonなどのネットショップを使うのも一つの手段ですね。在庫を少しでも現金にする意識が大切です。
もし、売り切ることができなかった場合は、他の在庫と一緒に置いておくのではなく、廃棄してしまいましょう。
廃棄することで、不良在庫が出たという事実をはっきりさせ、今後どのように対策していくかを考えるきっかけになります。
不良在庫はいつの間にか経営を圧迫して、ときに倒産の原因にもなるものです。悪影響が出る前に、しっかりと処分しておきましょう。
もし、不良在庫が残ってしまったら「評価損の計上」を
もしどうしても不良在庫が処分できなかったときは、会計処理で「棚卸資産評価損」を計上しましょう。
具体的には、在庫の価値が減ったことを仕訳します。これを先延ばしにしていると、費用の発生を遅らせて利益を操作したと捉えられることも。
どの在庫に対して評価損を計上するのかは、お店の会計士・税理士と相談しながら対策する必要があります。
不良在庫をなくして健全な在庫管理を!
不良在庫についてざっくりとした概要と処理の仕方を紹介しました。
おさらいすると、不良在庫とは売れる見込みがなく、かつ経済的に悪い影響のある在庫で
- 不良品
- 欠陥品
などが含まれます。
次に不良在庫を出さないための方法として、
- 適正な在庫の量を保つ
- 在庫を減らす意識を常にもつ
- 在庫回転率を計算する
の3つを紹介しました。
そして、不良在庫が出てしまったときの対処は
- ふだんの在庫管理を見直す
- とにかく売り切る
- 廃棄してしまう
の3つでしたね。もし不良在庫が残ったとしてもそのままにはせず、評価損を帳簿に計上しなければなりません。
「在庫は持っているだけならコストはかからない」と思っているかたもいるかもしれませんが、倉庫のスペースをとっているという意味で在庫は「存在しているだけでコスト」です。
その上、他の在庫に影響を与える不良在庫となれば、今すぐにでも処分したほうがよいでしょう。
不良在庫で経営を悪化させないためにも、ふだんの在庫管理を確実にしておく必要があります。
正確な在庫管理には手間・時間がかかるので、管理システムを導入することも考えてみてくださいね。
この記事を書いた人
黒田剛司
大阪市立大学商学部を卒業後、新卒で独立。学生時代に身につけた経営・流通・マーケティングなどの知識を活かし、コマースについて幅広いジャンルで執筆。また、サイト制作やWebメディア運営も請け負っており、IT系の記事作成も可能。無類の動物好き。