WMS(倉庫管理システム)の導入で解決できる問題とは(※2018年8月追記)
モノの売買をするにあたって、在庫管理は規模が大きくなればなるほど管理のためのコストはかさんでくるものです。
在庫数が増えればより大きな倉庫を用意する必要が生まれますし、在庫数が多く倉庫も大きくなれば、検品や入出荷、保管の手間はそれらに比例してかかるようになります。
小規模であればマニュアルでコントロールできた処理でも、規模が大きくなれば万が一のミスが発生した際には事業にとって大きな負担となる可能性も高まってしまいますが、マニュアルの作業に限界を感じつつあるときに検討したいのがWMS、倉庫管理システムの導入です。
WMSは在庫管理における業務をスムーズに行えるように提供されているサービスです。
人の手で行うと多少のミスは想定内として考えなければならなかった倉庫管理も、完全にシステム化してしまうことでミスのリスクを低下させ、作業効率も格段に向上させることができるようになります。
今回はそんなWMSの概要と、WMSを用いることによるメリット、そして導入方法についてご紹介します。
目次
- WMS(倉庫管理システム)とは
- WMSの導入で得られるメリット・デメリット
- WMSの導入方法
- 自社にはどのWMSが合っている?
- WMSを導入するまでの流れ
- WMSはどれがいい?人気のWMSを紹介
- 業界ごとの導入事例
WMS(倉庫管理システム)とは
WMS(Warehouse Management System、倉庫管理システム)はその名前の通り、倉庫内の在庫の管理、例えば入出荷記録や保管記録を管理するために誕生したシステムです。
どういった作業を効率化するのか
倉庫内での処理は主に4つのステップに分けることができます。
(1)入荷
↓
(2)納入指示
↓
(3)出荷準備(ピッキング・荷揃え)
↓
(4)出荷
1つ目に入荷、2つ目に納入指示、3つ目に出荷準備、4つ目に出荷というプロセスで構成されていますが、一見シンプルな工程だからこそミスをした場合の修正も効きにくく、一つのミスが大きな損失を生み出してしまうこともあり得ます。
WMSが担当するのは、マニュアルで行なった場合に最もミスが起こりやすいであろうモノの数字に関する処理全般です。
具体的には、下記のようなミスを防ぐ目的があります。
- 理論在庫と実在庫数のズレ(入荷処理忘れ・処理間違い/誤出荷/在庫紛失/カウント間違い/NG品の処理間違い)
- 納入日時遅れ
- 納入先違い
今在庫が幾つ存在していて、出荷はいつどれくらい行うのか、次回分の入荷はいつ行われ、どれくらい必要になるのかなどをバーコード処理などによって一元化し、それぞれの処理できちんと辻褄が合うようミスのない計算と管理を行うことが可能になります。
一元化したシステムが存在しない場合は手書きで帳簿をつけたり、手動でエクセルなどの計算ソフトに適宜入力する必要がありましたが、こういったフォーマットに煩わしい思いをすることなくスムーズな倉庫管理を行えるようになるのです。
商品管理にも効果を発揮
WMSはシステムや専用端末によって在庫を管理するツールです。
WMSによって記録された管理情報では、その在庫が倉庫内のどこにあるのかや、いつから存在していたか、食料品の場合はいつが賞味期限なのかといった情報までシステムに記録されるため、古い在庫がいつまでも倉庫の隅に放置されたり、同じ商品とはいえ古くなった食料品を間違ってお客様に届けてしまう心配もありません。
あるいは商品仕入の入荷管理もWMSで行うことができます。バーコード処理で一元的に管理することで、必要以上に商品を仕入れてしまう心配もありません。常にデータは一括して記録されるため、情報が人の手によって被ってしまうこともないからです。
WMSの導入で得られるメリット
WMSの導入で得られるメリットとして最も大きいのは、やはりヒューマンエラーのリスクを大きく下げることができる点です。
具体的には下記のようなメリットがあります。
- 入庫/出庫処理のスピードアップ
- バーコードスキャンによる読み取りで誤出荷・誤入荷処理を防ぐ
- 棚卸しの簡略化
- ロケーション表示により商品を探したり場所に迷うことが少なくなる
- 賞味期限、消費期限などの品質管理
- 業務初心者でもスムーズに業務を行うことができる
- 端末による操作のため業務を行いやすい
- 商品の分類や区分を変えることで引当の設定を行うことができる
- ペーパーレス化
人為的ミスを最小限に
倉庫管理は作業労働になりやすい分、慣れてくると作業を単純に感じてしまい、集中力や注意力を欠いた動きが生まれやすくなってしまいます。そういったところからミスは生じるようになり、小さなミスが積み重なって思いもよらないアクシデントを生んでしまうこともあります。
また、目視などのマニュアルでデータ入力を行っていると、入力ミスはもちろんのこと、上述の通りフォーマットが一元化されていないせいで情報共有に時間がかかってしまったり、人間の読み取りミスで入力者が意図していなかったデータの解釈をされてしまうことも起こってしまうため、どうしてもミスの起こりやすい環境が生まれてしまいがちです。
データに関するミスでなくとも、在庫管理が手薄になってしまうことで、倉庫内の事故や不良品を出荷してしまうリスクも小さくすることができます。今は忙しいからとりあえず手近なところに保管しておいたり、手の届きやすいものから商品を出荷してしまうことが常態化すると、商品管理がずさんになり、思わぬ事故を誘発してしまうことになりますが、WMSを用いて在庫の出入荷時期や保管場所を一元化して管理しておけば、その時のタイミングによって商品の保管状況が左右されてしまうようなこともなくなります。
作業効率化は職場環境にも影響を与えてくれる
倉庫内の煩雑な状況が長引けば働き手の注意力も散漫になり、ミスがミスを呼ぶ悪循環を生むリスクも高まりますが、WMSの導入によるスマートな管理システムの構築は、単に人の手が介入しなくなることによるリスクの低下とともに、職場環境の改善による働き手の意識改革によって、ミスの減少や仕事効率の向上につなげていくことができるでしょう。
一度導入してしまえば、人間間の仕事の引き継ぎもスムーズに行うことができます。これまでは在庫の配置やデータの記録方法など、細かいところまで人の手と頭で覚えておく必要のあったことも、全てシステムによる管理に置き換えることができるため、たとえ新しくスタッフの研修を行わなければならない場合でも、必要最低限の作業だけ伝えておけばあとは自動的に複雑な部分はシステムが行なってくれるので、人材育成のために時間や労力のコストをかける必要も無くなるでしょう。
WMSのデメリット
強いてWMSのデメリットを挙げるとすれば、やはり導入コストの問題が挙げられるでしょう。
設備投資という意味でももちろんですが、職場の人がまだ誰も触ったことのないものを取り扱い、かつ全面的に導入していくということは何のノウハウもないまま業務を新しく構築していかなければならないわけですから、それ相応のコストは想定しておく必要があるでしょう。
とはいえ導入時にかかった負担や業務効率の低下は一時的なもので、一旦導入してしまえばそれまでのコストの分はもちろん、それに見合った環境改善に勤めることができるのは捨てがたいメリットです。
WMSの導入方法
WMSにも大きく分けて二種類のタイプが存在しており、必要に応じてどちらを採用するかを決めなければいけません。
オンプレミス型WMS
一つ目はオンプレミス型のWMSです。オンプレミス型とは自社向けに一からシステムを構築してしまうタイプのもので、必要な機能を必要なだけ導入したり、逆に必要性のない機能は排除してより使い勝手の良いものを作ることができるようになるため、ユーザビリティという観点ではレベルの高いシステムを導入することができるようになるタイプです。
あるいはネットワークも自社内のみで完結させることができるため、セキュリティの観点からも質の高いシステムが保証されるのも無視できません。
デメリットとしてはやはり一からシステムを構築する分、開発コストが高くなってしまうのと、システム保守のために専用のエンジニアを採用する必要がある点です。そのため導入コストだけでなく、維持コストもそれなりに高くなってしまうことから、よほど規模の大きい事業であるか、専門性の高いシステム管理が必要な会社に導入をお勧めしたいタイプと言えるでしょう。
クラウド型WMS
一方のクラウド型はインターネットを介して提供されるサービスを活用してシステムを導入するタイプであるため、オンプレミスのように開発コストや維持コストに大きな費用をかけることなくすぐにシステムを利用することができる小回りの効きの良さがメリットです。
セキュリティの脆弱性やクラウドサービス利用料による半永久的な維持コストはオンプレミス型に比べて目立つデメリットですが、それでも手軽に導入できるという利点は小〜中規模事業者にとって大きなポイントとなるでしょう。
どちらのシステムも一長一短が目立ちますが、まずは自社に導入する場合、どのようなシステムを必要としているのかを見極めるところから始めれば、失敗のないシステム導入を実現することができるでしょう。
自社にはどのWMSが合っている?
WMSの導入を検討しているのであれば、選択肢が複数あるのでどれがベストかいまいちピンとこないでしょう。
WMSの選定の前に、社内の倉庫管理において何が問題であるのかを明確にする必要があります。WMSを選ぶ際は各社の特徴やメリット・デメリットを把握して慎重に選ぶべきです。費用をかけてWMSを導入したものの、問題を解決するどころか業務に混乱が起きたというのでは会社の信用問題にも関わります。どういった問題を解決したいのか、サービス提供会社のサポートは手厚いか、使いやすそうかなど様々な角度から問題点の洗い出しを行うことが肝心です。
オンプレミスかクラウドで選ぶのであれば、以下の項目を基準に判断しても良いでしょう。
オンプレミスを選ぶ基準
- 開発費用が潤沢にある
- セキュリティ面を重視する
- 在庫管理方法や出荷方法などが特殊なためそれに対応できるシステムを構築したい
- システム関連に強い従業員を配置できる
クラウド型を選ぶ基準
- WMS導入費用がそれほどない
- 導入に関して複雑な設定や時間をかけたくない
- 複数の拠点にある倉庫情報を一元的に管理したい
- システムに強い人員が確保できない
WMSを導入するまでの流れ
WMSを導入するにあたって、業務に混乱が起きないように以下のステップを経たうえで本番環境の導入を行うことが良いでしょう。
【WMSを導入するまでの流れ】
・業務フローの確認・倉庫業務における問題点の共有
↓
・問題解決のために必要なシステムを確認
↓
・他のシステムがあれば連携できるかを確認
↓
・WMSの比較・選定
↓
・WMSの設計・整備・マニュアルの作成
↓
・スタート前にテスト環境で検証を行う
↓
・テスト環境で使用した際の問題点を確認
↓
・修正作業
↓
・本番環境で導入スタート
WMSを導入する場合、既存のシステムと連携できるかどうかも重要な要素となるので導入前にしっかりと検討したほうがよいでしょう。既存のシステムもしくはWMSと同時に導入するシステムとの連携がうまくいかないと、余計な業務が増えることになり、結果的にWMSを導入すること自体が失敗となってしまいます。
なおECサイトを運営している、もしくはこれから運営する場合、他社WMSとの連携実績があるOrange ECもおすすめです。
参考:Orange EC WMS(倉庫管理システム)連携
https://ec-orange.jp/ec-media/?page_id=15417
念には念を入れた周到な準備によってWMS導入後も業務を滞りなく進めることができます。
WMSはどれがいい?人気のWMSを紹介
導入実績数No.1、英語・中国語にも対応 ロジザード株式会社のWMS(※2018年7月追記)
ロジザード株式会社の提供しているWMSは導入実績数が多く、オンプレミスだけでなくクラウドにも対応しています。会社の規模に関わらず導入が可能です。
英語・中国語の他言語にも対応でき、海外の拠点でも同じWMSを用いることができます。中国・タイ・シンガポール・ベトナム・フィリピンに代理店があるため、相談やサポートをうけることができます。
また、ロジザード株式会社は2018年7月に東京証券取引所マザーズ市場に上場しました。主力であるWMSサービスをクラウドで提供することにより、顧客数・売上を伸ばしています。
今後も注目の企業です。
パッケージシェアNo.1 株式会社シーネットのWMS
クラウド型WMSシェアトップの株式会社シーネットは、倉庫内作業における効率化のためいち早くクラウド化に取り組んできた会社です。WMSシステムのci.Himarayas/WMSシリーズは2011年〜2016年でパッケージシェアno.1の実績を誇っています。提供されているパッケージは以下が挙げられます。
ci.Himarayas/WMSスタンダード版…運輸・物流企業からメーカー・卸し、小売企業など
ci.Himarayas/GLOBAL…中国、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、インド等へ向けたSCMに対応
ci.Himarayas/ec…ECサイトに特化したWMS
ci.Himarayas/検品動画…クレームを防止のため梱包・検品作業を動画にするサービス
経験豊富な日立 物流センター管理システム
豊富な物流現場の経験と知恵が大きな売りとなるこちらのシステムですが、システムの導入で何が最も重要なのかを理解していることは新規導入者にとっては頼もしい味方伴ってくれるはずです。
参考:http://www.hitachi-hbsoft.co.jp/solution/wms/
個人事業にもオススメ クラウドWMS
最短1日で稼働することができ、初期費用も比較的安価にまとめられているのがこちらのサービスです。クラウドコンピューティングを活用することで、パッケージよりも安く確実にサービスを提供し、中小企業や個人事業主でも導入が容易になっています。
物流のプロのシステムを自社でも 見える化@Web
国内の物流最大手であるヤマトが提供する倉庫管理システムです。管理の効率化や荷物の品質管理の徹底、在庫精度の向上などあらゆる業種のニーズにも確実に応え、その豊富なノウハウをもとにユーザーは確実に効果を得られるようサポートを受けることができます。
業界ごとの導入事例
WMSは業界ごとの相性なども選定において重要となってきますが、主要な業界でどのWMSが導入されているのかも見ておきましょう。
建設業
とある建設業者の場合、日立物流ソフトウェアを活用して現場向けの受発注や在庫管理システムを採用しています。
発注の効率化、管理画面の整理や一括管理の簡便化により、現場と事務の間でミスが生じないようシステム化することに成功しています。
またwebで在庫管理を行うため、いつでもどこでもリアルタイムの状況を把握することができるのも大きな利点です。
参考:http://www.hitachi-hbsoft.co.jp/case/result/stock1.html
飲食業
大手ファーストフード店「ミスタードーナツ」を運営する株式会社ダスキンでは、NECの倉庫管理システムを独自に導入することで問題解決に当たっています。
全12箇所の物流センターと約1300店舗にハンディターミナルと二次元バーコードを活用した情報共有のシステムを構築し、リアルタイムでシステムに登録されている全ての原材料の総在庫数を把握できるようになっています。
参考:https://jpn.nec.com/press/201206/20120627_01.html
物流業
Eコマースが盛んになることで大きな需要と負担の拡大が懸念されている物流業ですが、こちらは倉庫管理システムの導入によりその負担を大きく軽減させることができた例と言えます。
https://cooola.jp/case/
一つのケアレスミスがサービスの低下に直接つながる以上、効率化されかつ正確な倉庫管理は物流業では欠かせません。WMSの導入がこの会社では大きな助けとなっているようです。
医療品業
医療に関わる荷物は生命に直接関わるデリケートな品であることは間違いありません。
WMSの導入により人的負担を少しでも軽減し、ケアレスミスの発生リスクを最小限に抑えることが、結果的に大きなコストパフォーマンスを実現することに繋がります。
参考:http://www.cross-docking.com/case/konoike/
さいごに
いかがでしたか?
WMSは倉庫内での業務効率化のために企業のニーズに合わせた環境を整えることができます。どのWMSが最適かは業務における問題を把握するところから始まります。
無理のない導入計画がWMS導入成功のカギとなります。
この記事を書いた人
黒田剛司
大阪市立大学商学部を卒業後、新卒で独立。学生時代に身につけた経営・流通・マーケティングなどの知識を活かし、コマースについて幅広いジャンルで執筆。また、サイト制作やWebメディア運営も請け負っており、IT系の記事作成も可能。無類の動物好き。