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食品スーパー、なぜ主要顧客が高齢化?次世代の顧客獲得に課題

全国の食品スーパーに共通する課題の1つが、主要客層の高齢化です。
ちょっと聞くと不思議に思われるかもしれません。毎日の食料品を購入するスーパーは、どの世代だって利用するわけですから。他の業種に比べれば、スーパーの来店頻度はどの年齢層でも高いことは事実です。
ただ、お店にとって重要な、より多く来店してくれて購入金額も高い顧客、いわゆるロイヤルカスタマーは高齢化が進んでいるのが実態です。
どうしてスーパーの顧客層が高齢化するのでしょう? 次の3つがポイントです。

  1. 日本のスーパーマーケットは、団塊世代の子育て期に発展した。
  2. 団塊ジュニアの子育て期には、スーパー以外に食品を買う業態が増えた。
  3. 団塊ジュニア世帯は、親の世代とニーズが異なる。

世代間でスーパーマーケットとの関係がどのように変わってきたか、以下で詳しくみます。

スーパーで最も買物をするのは60代

まず、現在の食品スーパーの主要客層について確認しましょう。
業界団体の新日本スーパーマーケット協会がまとめた「スーパーマーケット白書2016」(http://www.super.or.jp/?page_id=6709)によると、スーパーでの購入金額は世代が上がるほど上昇します。

「スーパーマーケット白書2016(http://www.super.or.jp/?page_id=6709)

50~60代が1ヶ月あたり4万円以上を購入するのに対し、30~40代は3万円台です。食べ盛りの子供を抱える世帯の多くは40代(月額36,831円)、50代(同40,677円)と思われますが、それよりも60代(42,392円)の方が支出額が大きいのです。

どういったものを購入するかにも、世代の違いが現れます。
野菜・魚・肉、これに惣菜も含めた4つのカテゴリーは、スーパーならではのコア商材といえます。これらの購入金額をみると、世代が上がるほどウェイトが高まります。スーパーならではの商材をより多く買うのもシニア層です。

野菜を丸々1個、魚を1匹。60代は手間を惜しまない

スーパーマーケット白書の調査では、たとえば野菜の買い方をみても、60代の特性がみて取れます。

「スーパーマーケット白書2016(http://www.super.or.jp/?page_id=6709)

野菜は丸1個での購入を好み、半分に切ったものや加工・冷凍したものを購入する割合は他の世代より低くなります。
魚は、さばいたり刺身にしたものは若い世代も購入しますが、さばいていない丸魚を購入する比率は、60代が67%とダントツで、30代(52%)・40代(51%)はもとより、50代(56.0%)と比べても差があります。
家庭で魚をさばかなくなったとは以前から言われてきました。白書の数値をみる限り、徐々にそうなったというよりは、今の60代と50代を境に急速にその傾向が強まったと言えそうです。
肉の傾向に、年代の差はそれほどみられません。30~50代は半調理品と呼ばれる調味済みや成形済みの商品を買うのに対し、60代はここでも素材重視です。

団塊世代の子育て期は、スーパーの発展期

なぜシニアはスーパーをよく使うのでしょう?
それは、60代以上が子育てをしていた当時の買物環境が影響しており、それが習慣として今も続いているせいではないでしょうか。
シニア層の中心といえば、1947~49年生まれの団塊世代です。そろそろ70代に突入するこの世代が子育てをしていた20代半ばから40代は、1970~80年代にあたります。
この時期、日本各地で衣食住を扱う総合スーパー(ダイエーや西友、イトーヨーカドー)や食品スーパー(地域ごとに発展)がチェーン展開を進めました。
これらのスーパーは、それまで商店街に軒を連ねていた八百屋や魚屋、肉屋などの専門店に取って代わる存在として、食品の購入スポットになっていきました。発展期のスーパーは、顧客の中心である団塊世代の生活スタイルやニーズに合わせ、商品・サービスを磨いていった業態といえるでしょう。

日常の買物は90年代までスーパーが中心だった

団塊世代の子供たちは、1971~74年生まれの団塊ジュニアを中心に90年代半ばから成人し、独立していきます。そして団塊世代は2000年前後で子育てを終えます。
団塊ジュニアが20歳を迎えた1994年の経済産業省商業統計をみると、食品・日用消耗品の分野でスーパーがいかに強い存在だったかが分かります。

当時、食品スーパーの市場規模は7.7兆円、総合スーパーは9.3兆円ありました。コンビニエンスストアは2.3兆円、ドラッグストアは、今や日用品のみならず食品でもスーパーと争う業態ですが、当時はまだ分類として独立していませんでした。百貨店の市場規模は10兆円もありましたが、食品・日用品のウェイトはそれほど高くありません。
団塊世代の食卓は、スーパーで購入した商材を中心に作られていたのです。

参考:経済産業省商業統計 http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syougyo/result-2.html

ヤングファミリーが取りきれない

2000年頃から、団塊ジュニアの子育てが本格化しました。この世代の子育ても今や後半戦に突入しています。団塊ジュニアを中心とする現在の子育て世帯を、スーパー各社は「ヤングファミリー」と呼びます。
ヤングファミリーの定義は広く、おおよそ高校生くらいまでの子供を抱える世帯を含みます。つまり20~50代までヤングファミリーです。40~50代をヤングと呼ぶかは微妙ですが、スーパーの主要客層であり続けるシニア層と対比した表現と思ってください。
もっとも、ヤングファミリー対策の中心となるのは30~40代向けの取り組みです。子供が生まれ、家族で食卓を囲むようになるとスーパーの利用頻度も上がるからです。

ところが、現在のヤングファミリーを取り込むことがスーパーの課題になっています。
先にも触れましたが、90年代の半ばまでは食品・日用品分野で圧倒的に強かったスーパーも、団塊ジュニアが子育て期に入る頃には状況が変わってきました。

ヤングファミリーはいろいろな店で買う

経済産業省の商業統計で、先に引用した94年の20年後にあたる2014年をみると、食品スーパーは7兆円から15兆円に拡大しています。しかし、総合スーパーは9.3兆円から6兆円に縮小しました。衣・住の縮小が大きいわけですが、食品も伸びてはいません。一方、コンビニの成長は目を見張るもので、2.3兆円から5.8兆円に拡大しました。

94年当時は分類が独立していなかったドラッグストアは、14年時点で3.6兆円の市場規模になっています。こちらは日用消耗品を中心としつつ、加工食品でもスーパーとシェアを取り合う存在になりました。
現在の子育て世帯は、スーパーだけでなくコンビニやドラッグストアを使い分けて毎日に必要なものを揃えます。親の世代とは購買行動が違っており、それがスーパー各社の悩みのタネ、シニアに比べて若い世代が取りきれないという課題認識につながっています。

参考:経済産業省商業統計 http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syougyo/result-2.html

共働きの食卓に、どう貢献するか

現在の子育て世帯は、親の世代とは生活スタイルが異なるため、日々の買物に求めるニーズも違います。スーパー各社は異業種との競争に加え、子育て世帯のニーズ変化に対応する必要にも迫られています。

最も重要な変化は、夫婦共働きが増加していることです。
仕事帰りのお母さんが、毎日食事を準備するのはたいへんで、野菜や魚などの素材から料理をこしらえることは時間がかかりすぎ、困難です。そもそもスーパーまで買物に行く時間もありません。家から近いコンビニで買うとか、調味料が切れたらスーパーではなくドラッグストアで済ませるとか、そういう行動も増えています。
この忙しいワーキングマザーに、スーパーは惣菜を充実することで来店を促します。惣菜の構成比は年々、高まる傾向です。
ただ、コンビニも負けてはいません。店内のフライヤー設備を活用するなど、食卓の1品になるような惣菜メニューを強化しています。

生鮮素材から惣菜へ

スーパーは惣菜メニューのさらなる充実策として、これまで素材として販売していた野菜や肉・魚を、店内で調理して商品化するようになっています。「生鮮の惣菜化」といわれるトレンドです。魚であれば、丸魚や切身でも売りますが、塩焼きに加工調理もして選択肢を広げています。
顧客から見ると、魚売場の塩焼きは、惣菜売場の塩焼きと何が違う? という疑問も生じるわけですが、一般的に生鮮部門の方が仕入原価は高いので、「生鮮の惣菜化」は素材にこだわった商品として展開されることが多いようです。ただ、顧客がそのことをしっかり理解しているとは言い難く、スーパー各社もいろいろな試行錯誤をしているところです。

日用品のカテゴリーは、ドラッグストアに対抗して価格を下げるチェーンが増えました。スーパー各社の日用品売場を見ると、プライベートブランド(PB)が意外にも多いと思われるでしょう。PBを増やすことも価格を下げる取り組みの一環であり、ドラッグストアに行かなくても、食品を買いに来たついでに日用品も購入してもらうという効果をねらっています。

まとめ:顧客の世代交代は自然になるものではない!?

スーパー各社のロイヤルカスタマーは、団塊世代を中心に高齢化が進んでいます。団塊世代は、スーパーで購入したものを中心に、食卓を形成してきた世代です。また、スーパーの店づくりも、団塊世代のニーズに合わせて発展してきた経緯がありました。

一方、子育ての中心が団塊のジュニア世代に移った00年代は、コンビニやドラッグストアなど、スーパー以外にも毎日の生活に欠かせないものを購入する場所が増えました。
また、現在の子育て世帯の忙しいライフスタイルに合わせ、スーパーはそれまでの商品・サービスのあり方を変える必要があります。
買ってすぐに食べられる惣菜を充実させることは、今の子育て世帯のニーズに対応する施策の1つです。

このようにして、スーパーマーケットは団塊世代に続く次世代の主要客層、ヤングファミリーを取り込もうとしているのです。

この記事を書いた人
宮川耕平

流通業界紙で12年にわたり記者として勤務。スーパーやコンビニなどの小売業のほか、食品、酒類、流通に関連するIT分野を幅広く取材。キャッシュレスやペーパーレス、働き方改革をテーマに活動中。

 

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