Amazon GOでミライ体験!レジ無しAIコンビニの仕組み、技術と課題
2018年1月22日にAmazon GOの1号店がアメリカ・シアトルにオープンしました。
Amazon GOは一言で説明すると、「レジに人がいない無人コンビニ」です。
これには車の自動運転で活用されているコンピュータ・ビジョンとディープラーニング、センサー技術が用いられています。スマホひとつを携えて店舗に入るだけで簡単かつスムーズな商品の決済を可能にする、まさに未来をテーマに描いた映画のような技術です。
当初の予定では2017年の早い時期にオープン予定だったものの、システムの技術的な問題で開店が延期となっていました。2017年に一般公開されたものは従業員のみ利用できるテスト店舗で、2018年1月にようやく一般向けの店舗のオープンにこぎつけました。その後、シアトル、シカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコでも続々と開店しています。
Amazon GOはオープン前からすでに大きな注目を集めており、開店してからも連日多くの来店客で賑わっています。レジに並ぶ必要もなければ支払いにもたつくこともありません。
以下では非常に気になるamazon goの技術について詳しく解説していきたいと思います。
- Amazon GOの利用方法
- Amazon GOの仕組み
- 特許出願書類からみるAmazon GOの技術
- Amazon GOのメリット
- Amazon GOが多店舗展開を開始(2018/12/10追記)
- 気になるAmazon GOの売上状況は?
- Amazon GOで現金が使えるようになる?(2019/4/12追記)
- 日本でのオープンはいつ?
Amazon GOの利用方法
Amazon GOはどのように利用するのでしょうか。
Seattle Times(シアトル・タイムズ)ではAmazon GOの副社長、Gianna Puerini氏の写真と共に店内の様子や利用方法について紹介しています。
Amazon GOの店舗入り口はこのようにコード読み取り機器が並んでいます。緑色に光っている部分がスキャン読み取り箇所です。
入店するには、まずスマホをかざしてゲートにある機器でQRコードをスキャンします。
その後、商品を自由に手にとります。店内にはショッピングバッグが置かれており、バッグに商品を入れていくことができます。
手に取った商品はスマホ上にすべて表示され、もし会計内容が間違っている場合は削除することができます。
ニューヨーク・デイリー・ニュースによると、エラーに気づいた場合もしくは商品に満足しなかった場合、Amazon GOアプリ内で「refund(払い戻し)」ボタンを押すことによって返品をおこなうことができます。しかも、商品の返品は必ずしもおこなわなくて良いというのが驚きです。
If shoppers notice an error on their charges or are unhappy with a purchase, they can simply tap the “refund” button on their receipt within the Amazon GO app — no returns necessary.
出典:NY Daily News、Amazon’s first cashier-less grocery store is finally open
店内には調理スペースがあり、サンドイッチなど店内に置く生鮮食品をその場で作っています。
商品の品出しをするスタッフ。
会計時はゲートを通るだけ。レジで会計することなく簡単に買い物をすることができます。
Amazon GOの仕組み
Amazon GOの仕組みはいったいどうなっているのでしょうか。
利用するには、まずAmazon GOのアプリをインストールする必要があります。アプリはiOS、Androidに対応しています。
Amazon GOの店舗入り口にはスマホの情報を読み取る機器があるので、QRコードを表示させたあと、スマホを機器にかざします。
認証が終わると、あとは自由に商品を手に取っていきます。好きなものを手に携えるか買い物袋に入れて店舗を出るだけで自動的に会計がおこなわれます。
Amazon GOではこれを「Just Walk Out Technology」と名付けています。
Youtubeに投稿されている動画でも分かりやすく解説されています。
動画を見てわかる通り、驚くべき便利さです。店舗に入り、商品をただ手に取るだけで支払いが終わるシステムはまさに画期的な技術です。
特許出願書類からみるAmazon GOの技術
amazonの特許を出願した書類を参考にすると、Amazon GOの”Just Walk Out”技術を可能にしているのは、店舗内に複数設置されているカメラとマイク、棚に設置されたセンサーの組み合わせです。
ディープラーニング・アルゴリズムにより人の動きをトラッキングし、一度手に取った商品をキャンセルして棚に戻したりする動作なども正確に捉えます。店内の天井にはいくつものカメラが取り付けられており、これにより全ての来店客の動きを把握します。
参考:US PETENT & TRADEMARK OFFICE, SYNCHRONIZATION OF DIGITAL CONTENT
http://appft.uspto.gov/netacgi/nph-Parser?Sect1=PTO2&Sect2=HITOFF&u=%2Fnetahtml%2FPTO%2Fsearch-adv.html&r=1&p=1&f=G&l=50&d=PG01&S1=(Steven.IN.+AND+Kessel.IN.)&OS=IN/Steven+and+IN/Kessel&RS=(IN/Steven+AND+IN/Kessel)
Geeks Wireによると特許出願書類の中には商品の識別方法としてRFIDの言及がありますが(上記の資料の中では2ページ目)、Amazon GOにはRFIDは用いられていないとされています。
参考:GeeksWire、How ‘Amazon GO’ works: The technology behind the online retailer’s groundbreaking new grocery store
https://www.geekwire.com/2016/Amazon GO-works-technology-behind-online-retailers-groundbreaking-new-grocery-store/
Amazon GOの開店が延期となっていた原因として、トラッキングがうまく動作しないという問題がありました。
20人以上の来店客の動きを同時に追うことが困難と報じられていたため、開店したということはこの課題が無事解決したということでしょう。
Amazon GOのメリット
Amazon GO のメリットは、レジで会計を待たなくて良い点と決済のスムーズさです。
何人もレジに並んでいるのを、イライラしながら待つ必要がありません。
また、レジにチェッカーを配置する必要がないため、人件費を確保する必要がありません。人がおこなうのは、商品の在庫・鮮度チェックと品出し程度。
これらのメリットは、コンビニを経営している企業にとって願ってもないことです。当然、日本のコンビニもAmazon GOの技術に注目しています。
ファミリーマートもAmazon GOに似た「ファミマミライ」を発表
ファミリーマートは2017年6月に「ファミマミライ」という技術のコンセプトを発表しました。
コンセプト動画ではファミマミライのClova(クローバー)というシステムがこのように描かれています。
- 近くのファミマ店舗を教えてくれる
- 商品情報や割引情報をディスプレイに表示
- 商品在庫を自動で管理。少なくなった商品の品出しや在庫の発注も楽に
- LINE Payで入店記録と支払い処理
ファミマミライとAmazon GOが決定的に違う点は、ファミマミライが有人を前提にしていることです。コンセプトムービーを見る限り、ファミマのClovaは店舗スタッフの業務を助けるための補助的な役割を担うようです。
ファミマミライの一般公開や開店時期は具体的には発表されていませんが、期待が高まります。
Amazon GOが多店舗展開を開始(2018/12/10追記)
2018年夏、シアトルにAmazon GOの2店舗目、3店舗目がオープンしました。
3店舗目はこれまでの二店舗よりも店舗規模が大きく、Amazon Meal Kitsが製造したミールキットの販売も行っているということです。
Amazon本社のあるシアトルを離れ、サンフランシスコとシカゴでもAmazon GOがオープンしています。
二大都市への進出ということで、多店舗展開が具体的に動き始めていることがうかがえます。
さらに、サンノゼやロサンゼルス、ダラスといったアメリカの主要な空港への出店も検討されているという報道がなされています。
キャッシュレスで早く決済でき、非常に利便性が高いAmazon GOは、空港での買い物ニーズとマッチしていると考えられ、実際に導入されれば、アメリカの各空港へ普及していくのではないでしょうか。
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/12/08/2018-12-07-amazons-cashier-free-go-stores-may-be-coming-to-airports/
気になるAmazon GOの売上は?
Amazon GOが前項の通り本格的に多店舗展開を行えば、1.5倍の坪単価で従来の店舗を運営する企業を圧倒するという予測が出ています。
アメリカの平均的なコンビニエンスストアのサイズ(約50坪)での単価を見てみると、1坪あたり約204万円だそうです。
Amazon GOの店舗面積もほぼ平均と同じ約50~60坪で、1坪あたり約305万円の売上となっています。1坪あたりの売上金額は、従来のコンビニの1.5倍。
もしブルームバーグの予測通り3000店舗の店舗展開を行うとすると、4500億円の売上が見込まれるビジネスになり得る、ともいえます。
参考:https://www.retaildive.com/news/amazon-go-could-generate-45b-with-plan-for-3k-stores/545377/
Amazon GOで現金が使えるようになる?(2019/4/12追記)
2019年4月、「Amazon GOで現金を使えるようになる」と報道されました。
時期や理由は明らかになっていませんが、フィラデルフィアでキャッシュレス店舗を禁止する法令が可決されたことが影響しているのではないかといわれています。アメリカの他都市、ニューヨークやサンフランシスコなどでも同様の法令が検討されており、そもそもキャッシュレス事業が禁止されている州もあるそうなので、技術的な問題よりも法律的な問題でテクノロジーを活用できないという別の課題が生まれてしまっています。
対応方法としては、通常の店舗のようにレジを置くのか、edyカードなどを配布し、現金のチャージができる機器をおくのかなどが考えられますが、具体的にはこちらも明らかになっていません。
続報が待たれるところです。
日本でのオープンはいつ?
現在Amazon GOが実際に利用できるのはシアトルで展開している3店舗。今後もアメリカ国内で店舗が増えていくと予想されます。
日本でAmazon GOがオープンする可能性については今のところ発表されていませんが、Amazon GOの業績が順調に拡大していけば日本へ上陸する可能性もあるでしょう。
中国でもAmazon GOを意識したBingoBoxが登場
中国でもAmazon GOに似た無人店舗が一般公開されています。繽果盒子BingoBox(ビンゴ・ボックス)というものです。24時間オープンのコンビニで、広東省中山市郊外で試験運用されています。
利用するためにはBingoBoxのアプリをインストールする必要があり、エントランスでコードを読み取り入店するところは同じですが、商品に貼り付けられたNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)によって商品を認識している点が、ディープラーニングなどの技術を駆使したAmazon GOと大きく違うところです。
日経トレンディネットの記事の中では、レジスペースに商品を置くことで会計をおこなうと記載されているので、セルフレジに近い感覚でしょう。
決済はWeChat PayかAliPayでおこないます。BingoBoxの課題として、タグを各商品に貼り付ける必要があるため手間がかかることもそうですが、タグを利用するためコスト面で費用がかさむのではないかと考えられます。
まだ試験運用のため、今後BingoBoxが中国で普及するのか気になるところです。
参考:日経トレンディネット、中国の無人コンビニ「Bingo Box」に行ってみた!
http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/1031523/091900050/
まとめ
Amazon GOの実用化は小売の未来を変えるような画期的な技術です。長い期間の延期にもかかわらず、その話題性は衰えていません。
今後amazon GOが日本に上陸するかは不透明ですが、Amazon GOの発表を皮切りに最新技術を駆使した小売店舗開発のニュースが次々に報じられています。
日本のファミマミライをはじめ、JR東日本が実験を行っているAIコンビニなど、Amazon GOの誕生は最新技術を活用した無人店舗開発の起爆剤として作用していることがわかります。
Amazon GOの日本展開がもしあるとすればスーパーやコンビニなどの小売業者にとって脅威ではありますが、社会全体で見ればより便利な生活を実現する技術です。
小売店はこれからどのように差別化を図っていくかが課題でしょう。
これから無人コンビニがどのように広がっていくか、非常に気になるところですね。
参考:Seattle Times、Amazon GO cashierless convenience store opens to the public in Seattle