おサイフケータイの「タッチレス対応」が実証実験開始。キャッシュレス決済に新たなイノベーションか
株式会社NTTドコモとソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社、2019年末に、「おサイフケータイ」の「タッチレス対応」に関する実証実験を開始したと発表しました。
「タッチレス対応」とは、簡単に言えば、これまでも店舗での決済や駅改札の通過など様々な場面で利用されていた非接触ICカード技術方式であるFelicaと様々な無線通信規格を組み合わせることによって、スマートフォンをポケットやカバンにしまったままでの決済を可能にする技術です。
これまで必要だったデバイスを“かざす”という工数すら削減するこの技術は、政府が推進するキャッシュレス決済化の普及に新たな一石を投じるイノベーションになるでしょう。
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Felicaはソニーが開発した非接触ICカードの技術方式であり、NFC(Near Field Communication)によって、デバイスを対応リーダーにかざすだけで高速データ送受信が可能であり、現在でも様々な場面で活用されています。
今回の実証実験は、Felicaの技術に加えて、今後普及が見込まれている高精度な無線技術UWB(Ultra Wide Band)や、もともとスマートフォンに搭載されているBluetoothなどを組み合わせることによって、「かざす」という行為すら必要としないタッチレス対応の実用化を目指すもの。
UWBは超広帯域無線であり、これによってユーザーの位置を測定し、Bluetooth通信を活用してユーザーが立っている場所と決済に必要な情報の通信をまかない、決済のプロトコルにはFelicaの技術を用いる、といった仕組みになっているようです。
ちなみに、JR東日本も改札機にICカードをかざすことなく通過できる「タッチレス改札」の研究開発を進めていますが、こちらは改札機の天井に備え付けたデバイスからミリ波を照射することでユーザーが改札を通過したかどうかを判断する仕組みとなっており、NTTドコモの「おサイフケータイ」とは根本的に用いる技術が違うものです。
本事件の鍵となるUWB導入には世界有数の半導体メーカーであるNXP Semiconductorsの技術協力を得つつ、以下の3点について実験環境を構築する、としています。
- キャッシュレス決済
- スマートフォンを使った「デジタルキー」での車の開錠/施錠
- デジタルサイネージからの「広告・クーポン配信」
キャッシュレス決済化の推進に大きく貢献する可能性
特に【1】については、スマートフォンをカバンやポケットにしまったまま指定エリアに立つだけで決済完了できる、ドライブスルーなどでアプリを操作するだけで決済完了完了できる、といった「タッチレス払い」が実現することで、ユーザーの利便性は飛躍的に向上し、キャッシュレス決済化のさらなる普及に繋がることが期待されます。
キャッシュレス決済化を推進するにあたり、現在注目度が高いのはQRコード決済かもしれません。特にPayPayは破竹の勢いで導入企業を増やしている印象です。しかし、「利便性」という観点から見ると、NFCを用いた決済手段に軍配が上がるでしょう。
何しろ、決済に際してユーザー側で数回の操作が必要になるQRコードに対し、NFCはこれまでも「かざすだけ」というワンアクションで済んでいたのです。
実際、近年の各種決済手段利用率を見てみても、QRコード決済よりも非接触型モバイルアプリの方が高いということがわかります。
仮に「タッチレス対応」が実用化され、スマホをカバンやポケットから取り出す必要すらないとなれば、それは圧倒的な購買体験の質の向上へと繋がるでしょう。
「タッチレス対応」の実現が店舗運営にもたらすこと
「タッチレス対応」は、ユーザー側だけでなく、事業者側にも店舗の無人化省力化という点で大きなメリットをもたらすはずです。
QRコード決済は、店舗スタッフ側にも決済方法の確認というユーザーとのコミュニケーションやPOSの操作、ユーザーのバーコードをスキャンする、といういくつもの工数が発生するため、実質的な省力化には繋がりづらいと言えます。タッチレス対応が実現すれば、その工数が全て省略できるのです。
しかも、「かざす」という動作すら必要としないため、(それが重要な企業にとっては)大幅に回転率を高めることも可能になるでしょう。
さらに、セルフレジやゲートの仕組みを工夫することで、(Amazon Goほどではなくても)ユーザーにとって本当に便利な無人店舗も比較的簡単に実現できるかもしれません。
さいごに
キャッシュレス決済は現状でも様々なサービスが乱立し混沌としています。今後も様々な技術が開発されていくでしょうし、その速度も非常に速い分野です。
特に大規模な事業を展開している企業にとっては、特定のキャッシュレス決済手段を導入するのに膨大なコストが必要になってくるため、淘汰が進んだときに、どのサービスが生き残り普及していくのかを見極めることが非常に重要になってきます。
本項で紹介した「タッチレス対応」の技術は、2020年1月23日(木)〜24日(金)に東京ビッグサイトで実施される「DOCOMO Open House 2020」で一般公開される予定ですので、お時間が許す方は実際に体感してみてはいかがでしょうか。
参考:DOCOMO Open House 2020
http://docomo-rd-openhouse.jp/2020/