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国内事例つき! SDGsと消費者ニーズを満たすオフプライスストア

さまざまなブランドやメーカーの余剰在庫を安価に提供するオフプライスストア。米国発祥のこの新たな業態は、国内でも少しずつシェアを獲得しつつあります。
オフプライスストアのような二次流通は、サスティナブルな経済のあり方が求められる昨今のトレンドであり、今後も支持されていくと考えられています。
本記事では、オフプライスストアの概要と消費傾向の関係、さらに国内の事例をふまえつつ価格帯別の成功条件について紹介しています。

目次:

オフプライスストアは二次流通のひとつ

オフプライスストアは、小売店やEC事業者がさまざまブランドの余剰在庫、いわば売れ残りを安く仕入れ、低価格で消費者に提供する業態のことです。
米国ではブランドがオフプライスの流通を認めているために普及がはやく、オフプライスの巨大チェーン店も複数存在します。
この業態が順調な成長を遂げているのには、昨今の消費トレンドの後押しもあります。
全世界的にサスティナブル(持続可能)な社会や経済のあり方を追求する動きが高まっており、余剰在庫の排気削減は「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」の見地からも喫緊の課題とされているのです。

オフプライスストアとアウトレットの違い

オフプライスストアとよく混同されるのが、アウトレットです。
アウトレットが自社ブランドのアイテムを自社店舗で安く提供しているの対し、オフプライスストアは当該ブランドではない事業者が二次的に販売しています。
これが両者の違いであり、効率よく余剰在庫をさばくことができる特徴といえます。
ブランドにとっては、オフプライスストアの事業者に商品を買い取ってもらうことで余剰在庫を減らすことができ、オフプライスストアはブランドから直接在庫を入手することで安定していて確実な販路をもつことができます。
消費者にとっては、さまざまなブランドやメーカーの商品を安価に購入できるというメリットがあります。
なお、商圏や来店頻度、顧客単価も、アウトレットとはターゲット層が異なります。

オフプライスストアの商圏は近隣消費者

アウトレットは、車で1~2時間かけて訪れるユーザーを見込んで、郊外や空港近くに広大な土地を確保し、各ブランドごとの店舗を構えています。
一方、オフプライスストア(実店舗)の商圏は車で15分程度の近距離。日用品の買い物に出るついでなど、暮らしと地続きの消費を見込んでいます。

オフプライスストアは年6~8回の来店頻度を見込む

生活圏から比較的離れているアウトレットの想定来店頻度は、年に1~2回とされています。お盆やお正月といった長期休みには、福袋目当ての消費者がオープン前から並ぶことも。
オフプライスストアは近距離の消費者を想定しているので、年6~8回程度の来店頻度を見込んでいます。

オフプライスストアの顧客単価は約5,000円

アウトレット顧客単価を1万円以上に設定していますが、オフプライスストアは、店舗の近くに暮らす消費者が日常の買い物を購入することが想定されています。
そのため、アウトレットの半額以下である5,000円程度の顧客単価を設定していることがほとんどです。

米国最大のオフプライスストアは年間4兆円を売り上げる

米国の最大手オフプライスストアはTJXで、「TJマックス」、「MARSHALLS(マーシャルズ)」などを運営しています。米国だけでなくカナダや欧州、ヨーロッパに展開して、店舗数は4,500店以上。
同社の運営は順調に成長を遂げており、2020年1月期には417億ドル(約4兆円)の売上を記録しました。これは、前期比で7.0%増の数字になります。

TJXのCEOアーニー・ハーマンは、主要部門すべての4%以上の売上増を達成したと発表し、客数が順調に伸びていると話しています。
現在の米国において、オフプライスストアはECにさえ負けない小売の勝ち組として機能しており、今後数年もこの動きは継続するとみられています。

都内実店舗や通販などオフプライスストアの国内事例

オフプライスストアは、実店舗だけでなくECでも展開しています。
国内の事例を挙げました。

バイヤーがセレクトするオフプライス「ラック・ラック」

株式会社ゲオクリアの運営するLuck・Rack(ラック・ラック)は、バイヤーがパートナー企業の製品をセレクトして販売するオフプライスストアです。関東に3店舗、東海・北陸に1店舗、関西に2店舗を展開しています。
販売する製品は、パートナー企業から提供される余剰在庫品や季節外れの製品、メーカーによるお買い得品、軽微なほつれなどがあるサンプル品、B品など。

http://luckrack.com/

ドン・キホーテがオフプライスストアに参入

3月24日にオープンしたばかりの「オフプラ」は、ドン・キホーテによる余剰在庫販売店です。
第一号店は愛知県の「MEGAドン・キホーテUNY大口店」の2階部分で、年内に複数店舗の展開を予定。メンズとレディースのアパレル製品のほか、キッッズウェアやスポーツウェア、シューズやバッグなど約3万点以上の商品をそろえています。
リーボックやポロ・ラルフ・ローレン、ディーゼルといったブランドの商品を取り揃え、一点物や海外のみに展開している日本未発売モデルなども店頭に並ぶとしています。

https://www.donki.com/off_price/index.php

ジョイフル本田のファッションオフプラ「DISCAVA! 」

日用品からDIY関連材料、専門資材までを扱うホームセンターのジョイフル本田は、「DISCAVA! (ディスカバ)」というオフプライスストアを2店舗運営しています。主な取り扱いブランドはディーゼルやヘインズ、プーマ、リバイス、トミー・ヒルフィガーなど。
ホームセンターを「暮らしのテーマパーク」というコンセプトで運営している同社は、日常的なファッションアイテムを取り扱うことで、より楽しい購買体験を提供できるとしています。

https://www.joyfulhonda.com/discava/open2020_hitachinaka-chibant/

大手アパレルブランドの出品が魅力の「&Bridge」

株式会社ワールドと株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパンの合弁会社「&Bridge」は、両者の抱える国内外の有名ブランドの商品を取り揃えられることを強みとしています。
メンズ、レディース、キッズのアパレル製品、コスメやジュエリー、日用雑貨品まで幅広いカテゴリーの品揃えが特徴。オンラインストアも展開しています。

https://store.world.co.jp/s/brand/and-bridge/

自宅で試着・返品できる通販オフプラ「offprice.ec」

株式会社FINEが運営するオンラインのオフプライスストア「offprice.ec(オフプライス・イーシー)」は、毎日お得に買えるオフプライスストアというコンセプトのECサイトです。
取扱ブランドはアクネやハッシュアッシュ、インデックスなど。注文した商品を自宅で試着でき、サイズ違いや色違いの返品・交換にも対応しています。

https://www.offprice.ec/

オフプライスストア消費を促す風潮:サスティナブル、エシカル

米国から日本へと、次第に浸透しつつあるオフプライスストア。オフプライスストアでの消費を促す風潮としてサスティナブル(持続可能)な経済のあり方が追求されることと、エシカルな消費に注目が集まっていることが挙げられます。
2018年に、英国の老舗ブランドバーバリーが余剰在庫を焼却処分していたと報道され、批判が集まったことを覚えているでしょうか。
「売れ残り」の安売りはブランドイメージを下げるとして、バーバリーは衣料品や香水といった余剰在庫をすべて焼却処分していました。その額は2,860万ポンド(約42億円)にものぼると報じられています。とりわけ若い世代はこうした行動に潔癖であり、エシカル(倫理的、道徳的)な消費を好む傾向があるとされています。

オフプライスストアは、「事業者は余剰在庫を無駄にしないですむ」、「消費者は正規のルートでありながら安価に製品を購入できる」という点で、まさに時代の風潮に即した売買といえるかもしれません。

国内オフプライスストアのコンセプトは「宝探し」

国内のオフプライスストアは、実店舗もECもおしなべて「余剰在庫の廃棄を減らすこと」、つまりSDGsをコンセプトとして掲げています。
そしてもうひとつの共通するコンセプトには「宝探し」があります。宝探し、つまり掘り出し物を見つけるという購買体験は、かつてアウトレットモールがこぞって提唱していたものでした。しかしアウトレットという業態は巨大化し、もはやほとんどのブランドがアウトレット向けの製品を作り、サイズを取り揃えた状態で消費者に向けて販売をしています。
アウトレット人気が一旦落ち着いたといわれているのは、サンプルやB品といった「宝探し」感覚のショッピングを楽しんでいたユーザー層が離れたことも関係しているでしょう。

現在は、オフプライスストアが「宝探し」のわくわく感を消費者へ提供する役割を担いつつあります。
サイズがそろっていない、いつもお気に入りのブランドの商品があるわけではない、けれども何か掘り出し物があるかもしれない。そうした購買体験を、国内のオフプライスストアは提供しています。

オフプライスストア価格帯別の成功ポイントとは

オフプライスストアは、さまざまなブランドの商品を通常よりも安い価格で購入できることが消費者から支持を集めるポイントです。
品揃えと価格のバランスは、販売するブランドの価格帯によって変動します。適切なバランスを見極めることが、オフプライスストアを成功させる条件となるでしょう。

低価格ブランドの場合

低価格ブランドの商品は、メーカーや問屋、商社などから余剰在庫や放出品が多いという特徴を活かして、豊富なサイズ展開、カラーバリエーションを取り揃えられるというメリットがあります。

しかしこのような量販ブランドを主に取り扱うオフプライスストアは、絶対的な低価格にこだわることが求められます。
高級ブランドと違って定価の知名度が低いため、割引率をアピールするだけでは消費者アピールは弱く、多くの人が「安い」と認識できるような価格での販売が必要でしょう。

中価格ブランドの場合

ここでいう中価格ブランドとは、専門店や百貨店の商品をさします。これらの商品は、雑誌やネットによって商品定価が知られている傾向にあり、オフプライスストアでも、割引率のアピールが一定の効果を発揮します。
一方で、定価でもそこそこ購買されるために低価格ブランドほど余剰在庫は多くありません。そのために、品揃えがふるわなかったりサイズ展開がうまくいかなくなると、ラインナップに魅力を感じない顧客が離れるリスクがあります。
バイヤーやアドバイザーによる買いつけなどで、他店とは異なる何らかの特徴をもたせる必要があるのではないでしょうか。

高価格ブランドの場合

高い知名度をもつ高価格のブランドは、オフプライスストアで扱う際に、割引率が強いアピールポイントになります。
しかし、ブランドイメージの保持といった理由から在庫数がもともと絞られており、余剰品や放出品は少ないため豊富な在庫をいつも取り揃えるというわけにはいきません。
アパレルの場合、特にジャストシーズンでの販売は難しくなりがちです。中価格ブランドの商品と併用して、目玉商品的に運用していくのが安全策といえます。

まとめ

近年は、フリマアプリの台頭により、消費者にとって二次流通がぐっと身近になっています。バッグやアクセサリーをアプリひとつで簡単に貸し借りできるシステムも、若い世代を中心に利用が高まってきました。
所有することにとらわれない、最新流行のアイテムに執着しすぎないという傾向がオフプライスストアの利用を下支えしているようにも見えます。
アウトレット人気の過熱ぶりが一旦落ち着いた今、オフプライスストアが次なる主流のひとつとして、国内でも拡大していくのではないでしょうか。

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