小売業分野で活躍するOPOS対応サービスロボット
人手不足に対する施策やインバウンド対策、キャッシュレス対応など、小売店舗における課題は多様化、複雑化しているといえるでしょう。
今回は、その解決方法のひとつとして活躍を期待されているOPOS対応のサービスロボットについての記事です。
OPOSやサービスロボットについて解説し、サービスロボットがOPOSに対応するとどのようなことができるか、顧客接点で活躍するロボットの実例について順番に紹介しています。
- OPOSとは
- サービスロボットとは
- OPOS対応のサービスロボットとは
- OPOSとサービスロボットを連動させる新仕様
- 小売店舗の課題に対するOPOS対応サービスロボットの運用
- OPOS対応のサービスロボットが解決可能な課題
- 【事例】顧客接点で活躍するサービスロボット
OPOSとは
OPOSは「オープンPOS」のことです。1997年に、マイクロソフト主導によりWindows OSをベースにした新しい接続仕様として発表されました。それまでPOSシステムは、システムに対応済みの周辺機器しか利用することができませんでしたが、OPOSという仕様の登場によって互換性が向上し、さまざまな周辺機器と対応させることが容易になりました。
また、開発コストを抑えられるようになったため、便利なツールが多く開発、普及されるようになりました。
タブレット端末やスマホにPOSアプリをインストールして、気軽にレジ機能を使えるようになったのも、OPOSが普及したおかげです。
OPOSに対応しているデバイスには、ドロワーやキーロック、POSプリンタ、スキャナ、PINパッド、自動釣銭機、スマートカードリーダライタ、ゲートなどがあり、2018年11月時点で国内製品のうち、70社267製品が準拠していると公表されています。
サービスロボットとは
サービスロボットは、工場などに導入されている産業ロボット以外のロボットをさします。
- レスキューロボット
- 医療用ロボット
- 清掃ロボット
- 警備ロボット
- コミュニケーションロボット
などその種類と役割は多岐にわたっていますが、小売業で必要とされている店舗向けロボットは、コミュニケーションロボットであることが多い傾向にあります。ソフトバンクの感情認識ヒューマノイド「Pepper(ペッパー)」が、店頭で案内役を務めている姿を、ショッピングモールなどで誰もが一度は目にしているのではないでしょうか。
Pepperのほかにも、シャープ株式会社の「RoBoHoN(ロボホン)」、台湾のファミリーマートを中心に展開している富士通研究所のコミュニケーションロボット「ロボピン」などが存在しており、なかには店舗のマスコット的存在として集客に寄与しているサービスロボットも少なくありません。
OPOS対応のサービスロボットとは
OPOS対応のサービスロボットとは、こうしたコミュニケーションロボットに、POS機能を備えたタイプのことです。
日本には、POSシステムのオープン化推進とPOSアプリケーション開発の生産性向上を目指しているOPOS技術協議会があり、OPOSの仕様策定や関連のさまざまなセミナーをおこなっています。
OPOS技術協議会
https://www.microsoft.com/ja-jp/business/industry/
OPOSとサービスロボットを連動させる新仕様
OPOSとサービスロボットの連動については、OPOS技術協議会の分科会であるリテールコミュニケーションデバイス(RCSD)分科会が仕様を策定しています。
ヒューマノイド型のサービスロボット、コミュニケーションロボット向けの仕様として、分科会では「OPOS1.16」として次の新規仕様が追加されました。
【新規仕様】
- ビデオキャプチャー
- 個体認識
- サウンドレコーダ
- 音声認識
- サウンドプレーヤー
- 音声合成
- ジェスチャーコントロール
- デバイスモニタ
- グラフィックディスプレイ
【既存仕様へ追加された仕様】
- パワーマネジメント
- ライト
なお、これらの仕様は、IoTデバイスとPOSシステムの連動にも該当するものです。
小売店舗の課題に対するOPOS対応サービスロボットの運用
小売店舗でのサービスロボット活用を考える際、ロボットの独自仕様、独自環境がネックになっていました。
つまり汎用性がないため、導入コストに対して活用の幅が狭まったり、店舗の運用形態の変更についていけなくなったりするリスクをはらんでいるということです。
また、この問題をサービスロボットを開発するメーカーやシステムインテグレーター側からみると、開発要員の確保や教育に時間とコストがかかりすぎてしまい、スムーズかつスピーディなロボット開発が難しいという問題につながっています。
しかし、サービスロボットに対するOPOS仕様が策定されたことで、開発と維持のコストを下げられるようになり、さまざまなサービスロボットの可能性を探ることができるようになりました。
これは、POSレジ周辺機器の開発がOPOS仕様の策定によって便利かつスピーディにおこなわれるようになったのと同様です。
OPOS対応のサービスロボットが解決可能な課題
サービスロボットがOPOSに対応すると、既存のPOSシステムなど店舗系のさまざまなシステムとロボットを連携することができます。
それによって、小売の現場でロボットを活用するシーンにも幅が広がり、人手不足やキャッシュレス対応、インバウンド対策にも効果を発揮できる可能性が高まります。
OPOS対応サービスロボットの「接客と案内」
人間は、一般的にPepperのようなヒューマノイド型ロボットに対して親近感をもちやすい傾向にあります。そのため、接客や店舗案内が人からヒューマノイド型ロボットに変わってもそれほどネガティブな印象はもたれないと予想されるでしょう。
音声認識が得意なロボットでは、人に分かりやすい言葉の発生や精度の高いレスポンスが可能です。近距離でのみ会話が成り立つタイプ、10m程度離れていてもコミュニケーションが可能なタイプなどがあるので、店舗での活用スタイルによって選ぶことができるでしょう。
音声認識に特化したサービスロボットをOPOS対応にして活用すれば、人手不足の解消だけでなく、ロボットによる英語や中国語などの外国語対応、注文とPOSシステムの連動による各テーブルでの会計なども実現可能になります。
OPOS対応サービスロボットの「会計」
自走して案内や接客をおこなうのではなく、固定したレジとしてサービスロボットを活用する方法もあります。
アプリケーションでロボットを遠隔操作することも可能で、お辞儀のような動作をあらかじめプログラミングしておいたり、特定のフレーズを喋らせるようにしたりすることもできます。
人的コストとしては無人レジ、セルフレジと同様ですが、「ロボットが会計をする店舗」としての話題作りや集客アップも期待できるでしょう。
この場合、サービスロボットはPOSシステムと連携しているので、売上管理もリアルタイムでおこなうことができます。
【事例】顧客接点で活躍するサービスロボット
小売業や流通業で活用可能性のあるサービスロボットの中には、キッチンで調理業務や食器洗いをするロボット、バックヤードで在庫管理をおこなうロボットも含まれます。
ですが、OPOS対応のサービスロボットは基本的にPOSレジと同様の情報を管理運用できるため、顧客接点における活用がもっとも望ましいといえます。
ここでは、2018年12月におこなわれたOPOS技術協議会主催「サービスロボットと最新OPOS仕様セミナー」で紹介された顧客接点におけるサービスロボット活用事例について、紹介します。
ちなみに、顧客接点以外の活用例は、「事例からみるサービスロボット:店舗の課題を解決するソリューション」で例を挙げているのであわせて参考にしてみてください。
フロント業務に特化し、容姿がプロモーションに貢献
台湾のファミリーマートでマスコットキャラクターとしても人気を博し、事前プロモーションを成功に導いたのが、富士通研究所の「ロボピン」です。
ロボピンは、VRデバイスを装着した人間の動きに合わせてロボピンが動く振り付けシステムも開発されており、自由度の高いプロモーションが可能になっていることも特徴のひとつ。台湾では店舗のプロモーションを担いましたが、東京都庁では観光案内を、広島銀行では手続きと観光案内を担当するなど、さまざまなシーンの顧客接点において活躍しています。
こちらの動画を見ると、丸みを強調したかわいいボディからは予想外ともいえる素早い動きにも対応できることが分かります。
ダンスだけでなく、スマホと連動させることでキャンペーンやスタンプラリーなどを実施することも可能になっています。システムやツールの組み合わせによって、店舗に合わせた自由度の高い販促がおこなえるといえるのではないでしょうか。
来場者のホスピタリティ向上を目的とした導入
西村京太郎記念館では、ミュージアム向けとして初めて富士通フロンテックのサービスロボット「enon」を導入しています。
「enon」は記念館の案内役業務として、
- 自律走行、身振り手振り付きの館内ガイド
- 液晶画面を使っての挨拶(西村京太郎登場)
- 自身の機能紹介(身振り手振り付き)
- 西村京太郎クイズの出題
という動作をおこないます。
「enon」は人に親近感を抱かせる人型でありながら、広い液晶画面を胸元に装着しており、機能紹介、クイズ出題といった機械だからこそ可能な業務を担っています。
こうした活用方法からも、店舗でのサービスロボット利用のヒントが得られるかもしれません。
初めてのサービスロボットには稼働部位の少ないタイプ?
サービスロボットは導入コストが高額なため、利用を考えていてもなかなか現実的には難しいという経営者も少なくないかもしれません。
サービスロボットは導入して終わりではなく、メンテナンス費用やシステム追加費用などがかかるからです。
最初のサービスロボットとして、故障のリスクが少ないものを導入するというのもひとつの方法でしょう。故障の少ないサービスロボットは、稼働部位の少ないものがまず挙げられます。
3自由度でありながら多くのモーション表現が可能な「Xperia Hello!」や、シャープ株式会社のロボット型携帯電話「RoBoHon」はほかのヒューマノイド型ロボットと比較すると、導入のかたちが見えやすいサービスロボットといえるかもしれません。
Xperia Hello!
Xperia Hello!は、もともと自宅向けデバイスとしてリリースされました。自宅にいる家族と外にいる家族がコミュニケーションをとったり、見守りサービスを使ったりするために用いられています。
BtoBビジネス向けに展開したのは2018年8月からです。
- Android標準のAPIが利用可能
- 音声合成、モーション、人感センサー制御が可能
- 400種類の動作表現ライブラリ
- 広角レンズカメラの顔認識、バーコード認識、決済可能
- Google Playストアを利用可能でアプリの追加更新が可能
Xperia Hello!にはこのような特徴があり、電通株式会社の受付業務、吉忠マネキン株式会社の店頭コンシェルジェ業務、ソニー・ライフケアグループのライフケアデザイン株式会社の運営する高齢者施設におけるコミュニケーションツールなどの導入事例が報告されています。
RoBoHon
「RoBoHon」は、小型で設置しやすくSIMを挿入してポータブルロボットとして使えるなど、ほかのサービスロボットとは異なるメリットがあります。
小型でも声やモーションの表現力は豊かなので、顧客とのコミュニケーションをはかるツールとして活用できるのではないでしょうか。
ライオン株式会社では、受付で担当社員の内線番号に通知する音声案内を担当したり、施設案内に同行するなどの活用がなされています。
また、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインやアビームコンサルティング株式会社では、ゴルフ場でのスマートキャディとしてアドバイス業務を担当し、小学校にプログラミング教育用としてレンタルされるなど、小売業だけでなくさまざまなシーンで利用されています。
まとめ
サービスロボットの中でも、コミュニケーションに特化したロボットは、小売の現場における人手不足やインバウンド対策の大きなサポーターとして活躍する可能性があります。
OPOS対応のサービスロボットなら、売上管理や顧客データ管理のソリューションとして活躍してくれるかもしれません。しかし、適材適所という言葉通り、各ロボットには得意なことと不得意なことがあるため、導入にあたってはまずどのようなシーンで取り入れたいかというアイデアや計画を準備することが重要でしょう。