小売・サービス業界におけるDX推進の効果的手法~エスキュービズムセミナーレポート~
エスキュービズムでは、リテールのより良い未来を業界全体で構築していくために、業務で培ったノウハウに基づいた社外向けセミナーを不定期開催しています。
本稿では、去る7月3日、弊社のパートナー企業様向けに開催されたセミナー、「小売/サービス業界におけるDX推進の効果的手法」の内容を一部抜粋し、レポート形式でご紹介いたします。
このセミナーは二部構成となっており、第一部ではパートナーアライアンス本部 部長 冨田が「エスキュービズムが目指すリテールイノベーションとパートナー協働」について、第二部ではDXコンサルティング部 シニアコンサルタント 清水が「小売/サービス業界に今求められているデジタルトランスフォーメーション」について、それぞれ登壇し、お話をさせていただきました。
【目次】
- 第一部:エスキュービズムが目指すリテールイノベーションとパートナー協働
- -幅広い事業で培ったノウハウと事業価値をリテールに集約したエスキュービズム
- -業界全体でデファクトスタンダードを生み出す
- 第二部:小売/サービス業界に今求められているデジタルトランスフォーメーション
- -DXにおける3つの全企業共通課題
- -業種別課題とソリューション(案)
- -業種別パートナー企業との協業の形
- さいごに
第一部:エスキュービズムが目指すリテールイノベーションとパートナー協働
幅広い事業で培ったノウハウと事業価値をリテールに集約したエスキュービズム
弊社は2006年に創業し、今期で14期目の会社です。創業時はレコメンドエンジンの開発などウェブサービスの領域のビジネスを行なっていましたが、そこからこれまで、ドロップシッピングのネット通販事業や家電の製造販売、中古車のEC販売、飲食店などかなり多角的に事業を展開してきています。
今の本業になっているECサイト構築パッケージ販売については2007年、POSのパッケージについては2011年ごろから手がけております。
これらの事業がそれぞれ数十億のビジネスになりましたが、そこで培われたノウハウ、事業価値は、全て小売に集約してビジネスを展開できるということで、2018年からECやPOSを含め、小売のデジタルトランスフォーメーション事業に注力しています。
業務の中身については幅広く、「なりたい姿はあるけれど、どうやればいいかわからない」というお客様の課題を抽出し、その要望を形にするための要件定義を行うコンサル業務から、実際のシステムインテグレーションと保守運用、収益を上げるためのデジタルマーケティング支援までワンストップで提供しています。
加えて、パートナー企業様と共に、テクノロジーを活用した新しいビジネスを研究開発するということにも取り組んでいます。
弊社製品としては、私たちの根幹となる「EC-ORANGE」というECサイト構築パッケージは1000サイト以上の実績が、それからネイティブアプリ型店舗用プラットフォーム「ORANGE POS」は5000店舗以上の実績があります。
加えて、事業規模が特別大きなお客様向けに、エンタープライズ向け次世代フレームワーク「REBLITZ(リブリッツ)」という製品をリリースしました。こちらはマイクロサービス志向のAPI群として、開発のフレームワークを提供するようなプロダクトとなっています。
私たちはウェブ領域においてもリアル店舗領域においてもノウハウがあるため、お客様が持っている顧客情報などのデータを統合して一元管理できるシステムを構築し、OMOを実現できるのが強みです。
そういった形でリテールテクノロジーのリーディングカンパニーを目指しているのですが、ここで言う「リテール」は決して小売業だけを指しているのではありません。「購買」を「予約」に置き換えることで、様々な業種業態に弊社のノウハウが活用できます。実際に、現在では飲食業やサービス業、メーカー、不動産やエアラインなど、小売のシステムが応用できる幅広い領域で弊社のサービスを提供しています。
業界全体でデファクトスタンダードを生み出す
私たちが提供しているのは、リアルとウェブのデータを1DB化して、人、モノ、お金の情報を一元管理できます、という仕組みのフレームワークの部分です。当然、その先には基幹システムやバックエンド側の業務システム、販促ツールや広告など、様々なソリューションが必要になるのですが、そこで、パートナー企業様がお持ちのシステムやソリューションとつなぐという協業が生まれます。これには様々な形があると思っていて、私たちのお客様に皆様のソリューションを紹介したり、その逆もあります。そういった意味で、私のパートナーアライアンス部が存在しているのです。
また、業界の常識を覆すような先進的な取り組みについても、これからの時代は、クライアント企業と受注企業という1対1の関係ではなく、n対nでサービスを開発、展開することでリテールイノベーションを起こしていくべきではないか、と考えています。
第二部:小売/サービス業界に今求められているデジタルトランスフォーメーション
DXにおける3つの全企業共通課題
私はセールスとして、実際に小売業に関するお客様と、年間だいたい200社と商談させていただいております。様々なお客様がいらっしゃいますが、「デジタルトランスフォーメーション」について検討するというお客様はやはり事業規模がある程度大きな企業になってきます。
私がDXについて普段どんな話をしているか、基本的には3つです。
一つ目は、ウェブとリアルのDBを統合しましょうということ。ECは30年、POSは50年、ずっと別々の道を歩んできています。みなさんにもポイント情報とポイントカードがECと店舗別になっている、というような経験があるかもしれません。
私がお客様のところへ行くと、業界上位の大手企業でも、店舗で何かを買って、そのポイントが反映されるまで1日2日かかりますという状況はよくあります。なので、ECとPOSを連結して会員情報を統合することをまずやりましょうとお話します。
そうすることで、例えばECやPOSそれぞれにかかっているランニングコストを圧縮できたり、今後やっていきたい施策を実施するに当たって統一システムの方が管理しやすいというメリットがあります。
残りの二つは、「コストとリスクを軽減したい」というお話が一点。もう一つは「どうやって売上をアップするのか」です。
最終的に私が言うのは、「弊社のシステム、ベストのソリューションを導入していただいて、アップセルしましょう」ということです。要するに、システム投資にそれなりにコストはかかりますが、売上はあげましょうとお話しています。それができないシステム導入は単なる「設備投資」に過ぎませんので。ここにご賛同いただけるかどうかが、DXの成否を分けるポイントとも言えます。
エスキュービズムは、ともすると「ECやPOSの業者」という見られ方をされていると思いますが、実態はこのように、もっと上流の部分からお客様とお話をしています。
例えば、冒頭にあった「リスクとコストを軽減する」という話で言うと、システムだけではなく人のオペレーションを変えなくてはいけません。例えばEC管理者のオペレーション内容のヒヤリングをして、それを変えなくては真の解決はできないんですね。店舗も同様です。「スタッフの働き方をこう変えないと、実質コストは下がらないですよね」というような、システムの外にある事象や経営課題に対して切り込んで、コンサルティング的なポジションで話をします。
お客様の本当の意味で必要な要件の核心に迫るところについて、私たちはアイデアを出します。そしてその「実現手段」について、パートナーの皆様のご協力をいただくことで、エスキュービズムはDXに対するバリューを出しているのです。
業種別課題とソリューション(案)
これは日頃お話している中でよく出る業種別の課題と、あくまで例えばということで、私がどんな提案をするかというイメージの触りです。
製造業(食料品メーカー直販)の場合→需要予測/在庫・販売数リアルタイム集計
例えばデパ地下にある洋菓子店などは、1日の販売量を全て入荷してショーケースに全部並べます。売れなかったら廃棄になりますが、在庫がなくて売れないのも困る。だから大量に入れるのです。廃棄する分を見込んでいるため、定価が高くなるという事情があります。したがって、需要予測を立てて、これに対して在庫数や売れた数をリアルタイムで集計して細かく出せるような仕組みがあるといいですね。
部品卸売業の場合→EC販売による利便性向上
例えばPCメーカーなどで、細かいパーツをセット販売するという時に、ECを使って売るにはどうすればいいのかというお悩みがあるとします。そのためには完成製品と部品を紐づけておくデータベースを作らなくてはいけません。さらにそれを基幹システムと連携して仕入れや在庫の管理も考えないといけないのですが、私たちはそういったソリューションも提供できます。
レストラン→入店時の会員情報取得によるサービス向上
レストランに限らずですが、ポイントカードって、会計時じゃないと渡さないので、その時点まで顧客の情報を取得できません。しかし、本当はお店に入ってきた瞬間にそのお客様がどういう人物かを知れたほうが接客の質が上がります。入店時にその情報を取得するには様々なやり方があります。入り口にセンサーを設置してタッチさせるとか、ビーコンから情報を取得するソリューションなどもあります。
不動産(オフィスビル)→福利厚生施設の予約・決済システム
最近では不動産業のお客様ともお取引があります。その例では、オフィスビル の中に福利厚生で使うジムやカフェがあり、それを予約して、予約時にも決済できるし、当日交通系ICカードでも決済できる、給与天引きにもできる、といった仕組みを提供しています。
業種別パートナー企業との協業の形
続いて、少し切り口を変えて、パートナー企業の皆様と私たちが具体的にどんな形で協業できるかというものをまとめてみました。
コンサルティング企業の場合
コンサルの皆様は様々なアイデアや知見、経験を持ってお客様の業務改革をされていると思います。そういったパートナー様とは、私たちがシステムのデリバリー側に回ってプロジェクトを推進していきます。場合によっては私たちがPMOに入ることも可能です。
SIer、システムベンダー企業の場合
弊社とは得意領域が違ったりする場合は横並びでクライアント企業に提案するということもありえますし、パートナー様の下に入らせていただいて一部分を請け負うということも可能です。
ソリューションベンダー/ハードウェア製造企業の場合
皆様が日頃の営業活動の中で、成約に漕ぎ着ける「決め手」としてエスキュービズムを使っていただくという考え方があります。パートナー様の製品を活かすためのデータ統合の部分をエスキュービズムに任せていただくことで総合的にクライアントにソリューションを提供することができます。
少しでも気になることがあればパートナーアライアンス本部にご連絡ください。それがECとPOSという形ではない話でも問題ありません。むしろ、これからの時代においては、もはや「EC+POS=オムニチャネル」という単純な話ではないと思っていますので、もっと柔軟に、お客様にとって本当に有効な形で、データの統合とタッチポイントの設計によって顧客のエンゲージメントを高めるためのソリューションをご提案できればと考えております。
さいごに
エスキュービズムは、システムという軸において課題の抽出やアイデアの提案などのコンサルティングからデリバリーまで幅広いソリューションを提供できるだけでなく、業種業界という軸においても、豊富な実績と経験によって受けられるお話の幅が広いのが強みです。
そして、プロジェクトごとに自社の立ち位置を自在に変えることができるため、パートナー企業様とタッグを組むことで、これからの時代を切り拓くリテールの新しい形を高次元に具現化することが可能です。