ドイツMETROのRFIDを活用した「未来の買い物」その後に迫る!ヨーロッパの小売企業における最新テクノロジー活用方法とは
日本ではSuicaや高速のETCカードに利用されているRFID。
RFIDは読み取り機器を近づけるだけでICチップの情報が詳細に表示されるため、様々な分野での活用が期待されています。
小売業でも活用が期待されており、一時期、ドイツのMETROにおいてRFIDタグが活用され「未来の買い物」ができるようになると話題になっていました。
以下では、現在METROでRFIDが活用されているのかについて触れたあと、ヨーロッパの小売業で取り入れられている最新テクノロジーについてまとめたいと思います。
ドイツの小売店METRO(メトロ)のRFIDを活用した未来の買い物は現在どうなっているのか?
ドイツの小売企業であるMETROは以前「未来の買い物構想」を打ち出していました。
商品にRFIDタグを付けこれを読み取ることによって顧客のショッピングカートの中身を自動的に計算したり、ディスカウント品やロケーションなど商品の情報を表示することを可能にし、METROで働く従業員の業務効率化にも繋がると期待されていました。
しかしその後の運用がどうなっているのか不明だったので、実際にMETROに足を運んでみることにしました。
まずチェックしたのはショッピングカートです。ビデオのなかではカートに液晶ディスプレイが取り付けてありました。
しかしショッピングカートは普通のカートで、唯一変わっているところがあるとすればカートにクリップボードが取り付けてあるくらいでした。このボードはビデオのなかで紹介されているような液晶ディスプレイではなく、単に紙を挟んで書くためのボードです。また、作業している従業員を観察してみた範囲ではRFIDタグを活用している様子は伺い知れませんでした。
筆者が訪れたMETRO ライプツィヒ店の設備が整っていなかっただけかもしれないと思いMETROに問い合わせたものの、回答は得られませんでした。筆者が観察した範囲では、RFIDタグの運用は行われていないように見受けられました。実際に活用している様子が目にできなかったのは残念です。
以下では、METROの他にヨーロッパの小売業において最新テクノロジーを活用している企業をご紹介したいと思います。
ヨーロッパの小売業reta europe
ヨーロッパで毎年行われている、テクノロジーを活用した優秀な小売企業を表彰するRetail Technology Award Europe(reta europe)。2017年度の授賞式はドイツのデュッセルドルフで行われました。この授賞式では4つのカテゴリ別に、それぞれ3社ずつ受賞者が発表されました。カテゴリ別受賞企業について一部ではありますが簡潔に触れてみたいと思います。
Best Customer Experience(ベスト・カスタマー・エクスペリエンス部門)
レコメンド機能で受賞:ABOUT YOU(アバウト・ユー)
ABOUT YOUは若者をターゲットにしたアパレルECサイト。ドイツ、スイス、オーストリア、オランダ、ベルギー向けにサービスを展開しています。
ABOUT YOUの優れている点は個人に合わせたファッションの提案を行うこと。自分の興味があるファッションをユーザーがサイト内で探すのではなく、ファッションの提案をしてくれるウェブサイトの構築を行いました。ABOUT YOUでは購入してから100日以内であれば返品が無料で行えるうえに、平日の営業日1-2日程度で処理が完了する点でユーザエクスペリエンスを高めた点が急成長の理由として挙げられています。
商品の位置測定機能を開発:Leroy Merlin(ルロイ・メルラン)
ルロイ・メルランは1923年に設立されたフランスの企業で、フランス最大のホームセンターです。
ルロイ・メルランは「Pricer Electronic Shelf Label」と呼ばれる商品在庫の位置を知らせるタグを活用しています。店内各階に設置されているトランシーバによって商品の位置測定を可能にしています。これにより、サービススタッフだけでなくスマホのアプリを用いて顧客自らが商品を探すことができる技術が実装されています。売り場面積が広いホームセンターのような小売店では、このように商品在庫の位置検索が簡単にできる技術は非常に便利でしょう。
ロボット接客を活用:Media-Saturn(メディア・ザターン)
メディア・ザターンはドイツに多店舗を展開している家電販売店で、Metroグループ傘下の企業です。ドイツ最大の応用研究機関であるFraunhofer Gesellschaft(フラウンホーファー・ゲゼルシャフト)と開発共同し、Saturnのインゴルシュタット店において自立型接客ロボットの「Paul(パウル)」を活用しています。
こちらのビデオはドイツ語ですが、Paulがどのようなものか雰囲気はつかめると思います。
Paulは店内にある45,000商品について案内を行ううえに、製品のオンラインデータベースに接続しているので、現在の価格や特別価格、在庫状況についても答えることができます。Paulが対応できない顧客の要望に対しては、VoIPによってセールスに電話がつながるようになっています。Paulが単純な問題解決を行うことにより、人の仕事を軽減することが期待されています。
Best In-Store Solution(ベスト・イン・ストア・ソリューション)
オムニチャネルで新しい経営:Benetton (ベネトン)
本社はイタリアにある世界に店舗を展開する服飾販売のベネトンは、自社の直販店またはフランチャイズ店に向けて、正確な製品情報をオンラインで知ることのできるシステムを利用することによって新しい経営方法を確立しました。
従来のレガシーシステムにバックオフィスソリューションとして展開、ヘルプデスク、インシデント管理、監視、オンサイトサポートを連携することができます。
アプリで顧客をロイヤルカスタマー化:Bollag Guggenheim(ボラーク・グッゲンハイム)
スイスに本社のあるボラーク・グッゲンハイムは服飾販売を行っており、取り扱いブランドはMarc’O Polo(マルコポーロ)やGUESS(ゲス)などがあります。
消費者にアプリをダウンロードしてもらうことによって、セールやお得情報を受け取ることができます。これによって顧客のロイヤリティを高めることに成功しました。
Best Enterprise Solution(ベスト・エンタープライズ・ソリューション)
すべてのデータにリアルタイムアクセス:Aydınlı Group(アイディンリグループ)
Aydınlı Groupはトルコの企業で、Pierre CardinやU.S. Polo Assnといった服飾ブランドを販売しています。
SAP、 AP、Visual PLM、およびBusiness Objectsを使用して、すべてのソリューションとしてサプライヤポータルを開発することを決定しました。これによりどこでも、どのデバイスでも、リアルタイムデータにアクセスすることができます。ユーザーフレンドリースクリーンによって膨大な情報を得るのにたった数クリックで利用できます。
インメモリコンピューティングを採用:Europris(ユーロプリス)
Europrisはノルウェーの小売企業です。Europrisはサプライチェーンアプリケーションに最適化された独自のカラムデータベースであるRELEX Solutionsを用いています。インメモリコンピューティングにより、従来のシステムの100倍の速さで結果を表示させることができます。Europris の230以上のディストリビューションセンターと600のサプライヤーにおいて展開されており、18週間で17%の在庫を削減、店舗の在庫状況は92%から97%に上昇、品切れ状態を53%に減少させ、SKUを30%以上に上昇、発注にかかる時間を85%にカット。以前は3時間かかっていた発注作業を30分に短縮することができました。
マネジャーは顧客のケアに焦点を当て、より良いディスプレイの配置と最新のフロアプランを構築しています。
機械学習アルゴリズムで在庫管理:Suomen Osuuskauppojen Keskuskunta : SOK(エスオーケー)
SOKはフィンランドの小売企業で、1904年に創業。フィンランド国内で多角経営を行っており、スーパーマーケット、耐久消費財、サービスステーション、ホテル、農業用品販売、車販売など多岐にビジネスを展開しています。
季節の影響やプロモーションのやり方は店舗によって異なるため、SOKでは各店舗にSKUの予測をする必要がありました。SOKでは翌日のために毎晩最終決定を行う5百万のデータに適用されるアンサンブルや機械学習アルゴリズムを用いています。アルゴリズムの最適化が行われることによって実在在庫とサプライチェーンマネジャーが定めた不足在庫の設定に基づき在庫レベルを決定するのに活用されています。
Best Omnichannel Solution(ベスト・オムニチャネル・ソリューション)
顧客とのタッチポイント増を実現:Euronics(ユーロニクス)
Euronicsはオランダの家電販売店で、オンライン販売も行っています。Euronicsの新しいオムニチャネル戦略ではメンバーが消費者に関連のあるタッチポイントで接触することができます。顧客は半径20km以内にある小売業者から全てのオファーをもらうことができ、店舗で受け取るか宅配してもらうかを選ぶことができます。
これによりEuronicsへのアクセスは60%上昇しました。今は280以上ののローカルサービスで8万件以上の商品が販売可能です。
成熟したオムニチャネルの姿:Hervis
Hervisはスポーツ用品販売を行っています。「より多くのショッピング方法を」というスローガンの下、実店舗とオンラインショップ双方においてシームレスな商品取り扱いを可能にしました。具体的には以下の点が可能です。
- クリック&コレクト
- クリック&リザーブ
- 店舗での注文
- オンラインでの注文
- 店舗での返品
- 店舗での交換
これらの他に、POSによってオンライン・オフライン決済を確認することが可能で、またギフト券や特別価格を利用することもできます。
参考・出典:EHI Retail Institute Award-Winner
https://www.reta-europe.com/en/award-winners/award-winners-2017/index.html
一部省略していますが、以上がreta europeにおける部門別受賞企業です。
最新テクノロジーを活用することで顧客のユーザエクスペリエンスを高め、業務の効率化を実現させている企業が目立っています。
これらの成功事例から日本の小売企業においても参考にできる点があるかもしれません。