世界へ発信する唯一無二の次世代型商業施設が誕生!渋谷PARCO体験レポート
2019年11月22日(金)、新生渋谷PARCOがグランドオープンを迎えます。2007年より計画がスタートした渋谷PARCOの建替え計画は、街全体を巻き込みながら約12年の時を経て進められ、PARCO開業から50周年という節目の年に完成し、ついにその姿が明らかになります。
店舗のミライを考えるメディアは、グランドオープンに先駆けて開催された内覧会に潜入。そこには、次世代型商業施設の名に相応しい店舗が待っていました。
本稿では、その中でも最新のテクノロジーが生み出す購買体験に着目してピックアップした店舗をご紹介していきます。
目次:
- あらゆるキーワードが丁寧に詰め込まれた箱、50年目の新生PARCO
- ピックアップ店舗1:βOOSTER STUDIO by CAMPFIRE(1F)
- ピックアップ店舗2:THE NORTHFACE LAB(2F)
- ピックアップ店舗3:PARCO CUBE(5F)
- ピックアップ店舗4:TiCTAC update(5F)
- 番外編1:World’s end supernova / #califSHIBUYA×ステレオテニス(5F)
- 番外編2:インフォメーションシステム
- さいごに
あらゆるキーワードが丁寧に詰め込まれた箱、50年目の新生PARCO
渋谷PARCOと言えば、1973年の初オープン当時から、渋谷カルチャーの発信源として時代を牽引してきた施設です。
今回リニューアルオープンした新生渋谷PARCOも、そのスピリットを完全に継承しつつ、さらにそこへテクノロジーや時代のトレンドを加味することで、誰もが楽しめる全く新しいショッピング体験を創出する場となっています。
過去と未来、ファッション、アート、カルチャー、エンタメ、テクノロジー、フード、サステナブル、ジェンダーレス、ノンエイジ——ありとあらゆるキーワードがPARCOという箱の中に丁寧に詰め込まれている……。施設に踏み込み、中をしばらく歩いてみての感想としては、そんな表現がしっくりきます。
ここには193の店舗が集まっているのですが、それら一つ一つがコンセプトや業態など、何かしら新しいチャレンジを打ち出しており、さらにそれらをパルコがフロアごとのコンセプトに則って編集しているため、ビル全体が圧倒的な個性を放っているのです。
各フロアでその個性をじっくり味わいながら歩くだけでも、軽く1日過ごせてしまうでしょう。
さて、当メディアのテーマは「店舗のミライを考える」ですから、その中でもテクノロジーを斬新な購買体験に結びつけている店舗に着目していきたいと思います。
ピックアップ店舗1:βOOSTER STUDIO by CAMPFIRE(1F)
こちらは、クラウドファンディングでおなじみのCAMPFIREの新業態であり、小売店舗というよりも「製品化前のプロダクトに直接触れることができる次世代型のショールーム」という方が正しいでしょう。
今回は、現状CAMPFIREにてクラウドファンディング実施中のものからメーカーの発売前のプロトタイプまで様々なプロダクトが展示されています。
BOOSTERのサイト上から申し込み、審査をクリアしたプロダクトであれば展示可能となっているようです。
シリコンバレーで話題となった「b8ta」や、CCCが手がける「蔦屋家電+」などと似たコンセプトを持った業態であり、その真価は、店内における顧客の行動データを収集し出品者にフィードバックする、それを製品のブラッシュアップや新規開発に活かしてより良いプロダクトを生み出す、という部分にあるわけです(BOOSTER STUDIOでは製品の販売もしていません)。
店内のセンサーで入店率測定
BOOSTER STUDIOの店内と通路の境界線および通路にはセンサーが張ってあり、店前の通行人数と入店人数をデータとして取得し、常に入店率を測定しているそうです。これは、ショールームのレイアウトなどの改善に活かせることができます。
また、店内の天井にはいたるところにカメラが設置されています。これは株式会社ABEJAが提供する「ABEJA Insight for retail」というAI分析システムの一部であり、カメラが捉えた顧客の性別、年齢、どのプロダクトの前にどれぐらいの時間滞留していたか、などのデータが取得でき、それらも出品者に対してフィードバックされるということでした。
店内には自走式の接客ロボットtemiが設置されていて、基本的には無人でも接客が可能な状態を目指すそうです。今後接客を経験することで精度も上がっていくでしょう。顧客の顔を認識して店内を追従する様子は微笑ましいものでした。
ピックアップ店舗2:THE NORTHFACE LAB(2F)
本気のアウトドアウェア・用品でおなじみのザ・ノースフェイスの店舗も、渋谷PARCOでは「LAB」として展開されています。
ここでは、従来であれば既製品の中からサイズ、色を選択するしかなかったアウターを、「ゼロイチ」でオーダーメイドできます。この完全オーダーメイドができるのは日本では今の所ここだけとなっているそうです。
実際にオーダーメイドをするための採寸システムを体験してみました。
全身を3Dスキャンしてオーダーメード
店舗の奥にある4畳ほどの小部屋に通されると、そこには灰色のフレームに囲われたスペースがあります。フレームには四方にセンサーが設置されていて、真ん中に立った人間の全身を360度スキャンできるようになっており、身長や胸囲、腕の長さなどを正確に反映した「アバター」を生成することができます。それと同時に、着丈や裄丈、身幅など、最もオススメのサイズを数値で弾き出してくれるのです。
実際にオーダーする際は、コンピュータ上で生成されたアバターにウェアを「試着」させ、各パーツの色や、着こなしの好みに合わせてサイズの微調整を行うことができます。アバターに着せたウェアは、手で引っ張った時の形の変化やシワのより方までリアルに再現されます。
従来のオーダーメイドでは、仕上がったウェアを着た状態を購入前に確認することができませんでしたが、このシステムではリアルにその姿を見ることができ、安心してオーダーできることでしょう。
こちらのオーダーメイドを利用する場合は、THE NORTH FACE LABのサイト上からWEB予約する必要があり、所要時間は約1時間半程度。お値段は、同じ製品の既製品と比べて倍になるとのことですが、ファッションにこだわりがある人にとってはその価値を存分に感じることができるかも知れません。
ピックアップ店舗3:PARCO CUBE(5F)
5階は、渋谷PARCOの中でもテクノロジーに特化したフロアとなっており、それを象徴するのが「PARCO CUBE」という一画です。ここに出店しているのは11店舗。それぞれキューブをイメージしたフレームに囲われており、どの店舗も10坪前後とかなり小さい売場面積となっています。
このエリアで特徴となるのは、PARCO CUBEのセンター通路奥の突き当たりに設置された巨大なデジタルサイネージです。縦型75インチのモニターが3台並べてあり、そこにはPARCO CUBE内で取り扱う商品が、店舗の垣根なくランダムに表示されています。
サイネージのQRコードをスマートフォンで読み取ると、サイネージと自分のスマートフォンが同期されます。
その状態で欲しい商品をサイネージ上で選び「カートに入れる」をタップすると、自分のスマートフォンで開いたPARCO ONLINE STOREのカートにタップされた商品が転送され、店舗を跨いだ複数の商品を一括で決済することが可能となっています。
カートに商品を入れた状態で、店舗に実物がある場合はそれを確かめに行くこともできますし、一旦その場を離れてから自宅などで改めて決済することもできるため、買い物の自由度は比較的高いと言えるでしょう。
実店舗に置いてある商品は限定アイテムや戦略アイテムに限られているそうで、売り場面積が小さくても大丈夫な理由はここにあります。そして、やはり店頭在庫とEC在庫は一元化されているとのことでした。
ちなみにPARCO CUBEの各店舗にも一回り小さなサイネージが設置されていて、同様にオムニチャネルショッピングが可能です(店内のサイネージに表示される商品は各店舗のもののみ)。
ピックアップ店舗4:TiCTAC update(5F)
PARCO CUBEと同じく5階にある「TIiC TAC update」は、腕時計のセレクトショップです。1984年に池袋PARCOに1号店をオープンしてから35年、この渋谷PARCOのリニューアルに合わせて、まさに“アップデート”された店舗としてオープンする、といったところでしょうか。
ヴィンテージものから最新スマートウォッチまで扱う時計の幅広さをアップデートした、というだけでなく、この店舗の特徴としては時計のバーチャル試着を可能にするタッチ式デジタルサイネージの存在でしょう。
サイネージの前に立ち、気になる腕時計をタップしてARを起動、左腕を曲げたポーズを取ると、選択した腕時計が自分の腕に装着したように表示されるため、実物に触ることなく、様々な腕時計を試着することができます。
サイネージ上のQRコードをスマートフォンで読み取れば、詳細な製品情報を取得したり、オンラインから購入することも可能です。
また、様々な服装(スーツ、Tシャツなど)に合わせるとどんな風に見えるか、自分とは違う性別の方が着用するとどんな風に見えるかもサイネージ上で確認できるため、プレゼントを選ぶ時などにも重宝しそうなサイネージとなっています。
番外編1:World’s end supernova / #califSHIBUYA×ステレオテニス(5F)
同じく5階のエスカレーター吹き抜け付近には、XRの常設展示「World’s end supernova」があり、昨年開催されたVRコンテンツアワード「NEWVIEW AWARDS 2018」でPARCO賞を受賞した空間デザイナー・Discont氏が手がけるデジタルインスタレーション作品を楽しむことができます。
自分のスマホを使って鑑賞するAR、ヘッドセットを借りて鑑賞するVRとも、鑑賞する人の視線に合わせて動きが変わる作品となっていて、エスカレーターの吹き抜け空間を水槽に見立てて、様々なオブジェクトが登場しては消えていく様は圧巻です。
特に印象的なのは、従来のVRと言えば、ヘッドセットをしてしまうと現実からは完全に隔離された世界に没入するもの、という印象でしたが、ここで体験するVRは、ヘッドセットにカメラが搭載されており、リアルな世界に架空のものが重なって見えるという新鮮さがありました。スマホで見るARの没入感を圧倒的に強めたのが、このVRという感じです。
さらに、World’s end supernovaの真裏にあたる外通路では、5階に出店している「calif」とグラフィックアーティスト「ステレオテニス」のコラボレーションコンテンツが企画展として展示されています。
こちらもARを使ったコンテンツで、外の壁面に描かれたアートワーク中央のARマーカーをスマートフォンで読み込むと、絵の中のオブジェクトが壁を飛び出してきたようなバーチャルフォトスポットが出現し、それを動画や静止画でキャプチャすることが可能となっています。
また、実際にcalifで買い物をした人だけが鑑賞できるスペシャルコンテンツでは、AR上でデジタルクーポンを手に入れるようなインスタレーションも用意されているようです。
このようなXRコンテンツの展示スペースを常設するというところに、「次世代型商業施設」を自称するに相応しい気概を感じました。
番外編2:インフォメーションシステム
音声認識での店内案内
渋谷PARCOの各フロアには、多言語化に対応したAI音声認識によるインフォメーションシステムが設置されています。以前から音声認識の実証実験を行っていたPARCOですが、ついに本格運用に至ったというわけです。
対応言語は日本語、英語はもちろん、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語、タイ語の5ヶ国語ということで、インバウンドへの対応にも手厚さを感じます。
もし、行き先のショップ名やブランド名がはっきりしている場合は、音声認識による検索がとても便利です。精度の高い認識率により、一発で目的地のフロア、マップを表示してくれることでしょう。なお、文章よりも単語レベルで店名、ブランド名で話しかける方が、より正確に認識されるのではないかと思います。
AIロボット「Temi」での店内案内
βOOSTER STUDIO by CAMPFIREで店内案内をしていたAIロボット「Temi」は、PARCOの館内でもインフォメーションを担っています。
こちらは有人のインフォメーションカウンタースタッフが来店客の質問に答えるもので、店内を回遊している「Temi」を見つけて話しかけることができます。
さいごに
今回は、店舗の未来という切り口でピックアップしたものをご紹介しましたが、これらは渋谷PARCOのほんの一部分に過ぎません。各店舗のコンセプトや、劇場や映画館で催されるエンターテインメント、店舗によっては朝まで営業しているというカオスな雰囲気の地下レストランフロアなど、テクノロジーが表に出ていない部分も含めて、かなり面白い体験が目白押しなこと請け合いです。
テクノロジーファーストではなく、顧客に対し何を提供し、体験してもらうのかという目的ファーストで突き詰めると、こんなにワクワクする空間が出来上がるという、未来の店舗の参考になる部分がたくさん感じられますので、グランドオープン後、何はともあれ一度は足を運んで、存分に楽しんでみてはいかがでしょうか。