店舗運営のAtoZ全31回
Lesson7 テナント/路面店の違い編
31テナント店と路面店の違い未学習
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イオンのショッピングモールを想像すればわかりやすいのですが、PB商品始め食料品・衣料などを売っているスペースはイオンの直営エリアで、「専門店街」と呼ばれるモールで営業をしている店舗のことを、「テナント店」と呼ぶことがあります。
そして、広義ではテナント店に属しますが、不動産屋さんを回り空き店舗を独自に見つけて賃貸し、家賃を払って経営をしている「路面店」と、そういった複合商業施設に入っている店舗とは、運営していく上でいくつか違いが出てきます。
そこで今回は、ショッピングモールで営業する店舗を便宜上テナント店とし、路面店との運営上の違いはどんなものがあるのかについて、以下の項目に沿って解説をしていきます。
- テナント店と路面店の違いとは
- 店舗の経営方針への口出し
- 賃料の発生状況が違う
- まとめ
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テナント店と路面店の違いとは
テナント店と路面店は、賃貸契約を結ぶことによって出店・運営されている、という共通点はあるものの、
- 店舗運営の自主性
- 賃料の発生要因
という大きく2つの面で、その運営で留意しなければならないポイントが違ってきます。
そしてそれも、フランチャイズ(以下FCと表記)加盟であるのか、完全に個人経営なのかによっても変化してきますので、以下ではそれぞれについて詳しくお話をしてまいります。
1、店舗の経営方針への口出し
テナント店と路面店でまず大きく違うのが、店舗の経営方針に関する自由度や、報告義務の範囲です。
個人が経営している路面店の場合、売上実績を参考に効果的な営業が可能な時間帯を自由に選んで営業時間が設定でき、併せて経営方針に口を挟まれることはありません。
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一方テナント店の場合、営業時間を自らの意志で決めることが基本的にできず、入店している商業施設の定めに沿った、営業時間を設定することとなります。
さらに、商業施設全体のイメージや美観を損なわないよう、
- 陳列商品の種類・色合い・大きさ
- 店舗照明の明るさ・外観のカラーリング
- ポスター・看板・のぼりなどの宣伝ツール
などに対する、運営本部からの細かい規定があることもあります。
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また、商業施設としての評判やイメージダウンにつながるような、顧客からのクレームやトラブル発生に関しては、運営本部への確実な報告が必要であり、場合によってはテナント契約を解除されてしまうケースもあるので対処には注意しましょう。
そして、この店舗における経営方針の自由度の低さや、クレーム・トラブル発生時の報告義務は、FC加盟の場合では路面店でもほぼ同じようなことが言えます。
- 【ここがポイント!】
~運営本部のサポートが受けられることも~ - この項で述べた、テナント・FC加盟店でのクレームや、発生したトラブルの運営への報告義務ですが、一見すると面倒で手間がかかるだけのように感じてしまいます。
- しかし、大型商業施設には「カスタマーセンター」のような、クレーム・トラブル処理をする専門部署があることも多く、報告をすることによってそういった部署のサポートを受けることができます。
トラブルがあったことを隠蔽したりすると、かえって大きな問題に発展してしまうこともありますので、テナント店やFCは運営本部に速やかに報告し、その指示を仰ぐようにしましょう。
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2、賃料の発生状況が違う
商業ビルや商店街などの空きテナントで、その斡旋・管理を不動産屋が行っている路面店の場合は、基本的に「固定された家賃=賃料」となってきます。
そのため、路面店の場合では、「売上-家賃+その他の経費(FC加盟店の場合はロイヤリティー)」が、そのまま店舗の利益となってきます。
ただし、個人経営の路面店の場合ですと、店舗の顧客創生やリピーター獲得に関わる全てのマーケティング戦略と、それに伴うプロモーション活動をすべて自分で決め、実行していく必要があります。
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一方、全国展開しているような大手FC加盟店や、大型商業施設のテナント店の場合は、運営会社自体が綿密なマーケティングを行っているのが普通であり、併せて
- テレビ
- ラジオ
- 新聞チラシ
- インターネット
などといった、各種メディアでのプロモーションを実施していることがほとんどです。そのため、店舗側で高いコストをかけてプロモーション活動を行う必要は原則的になく、知名度がある程度保証された状態で店舗運営を行うことが可能です。
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さらに、テナント店の場合では、それに加えて大型駐車スペースの完備や、交通アクセスの良さなどによる集客力の高さまで、そのまま店舗の売上向上に生かすことができ、その維持・管理費用もすべて賃料に含まれる、というメリットがあります。
この毎月納める「賃料」ですが、運営会社の規定がそれぞれ異なります。その中には注意が必要な場合があります。
ショッピングモールなどへテナント出店する場合、固定された家賃ではなく
- 売上保率・・・月次売上×設定利率
が、その賃料になっているケースがあります。
仮に、そのテナントでの1ヶ月の売上が200万円あり、設定されている売上保率が10%であった場合、その賃料は20万円ということになります。
では、売上が0円だった月は賃料がタダで済むのかと言えばそうではなく、テナントの貸し手である複合商業施設の運営側は、通常売上保率に併せて「最低保証売上額」というものを設定します。
この、最低保証売上額とは、仮に「100万円」に設定されている場合、売上保率が上記と同じ10%ならば、テナント側の売上が一切なくても「10万円」を賃料として徴収するという、運営側の賃料収入安定を目的とした、テナント賃貸契約時の取り決めです。
つまり、テナント店では売上を出しやすい環境を得る対価として、売上がアップするにつれ増えていく、この売上保率による賃料を支払っているのです。
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また、多くのショッピングモール運営本部は、自身の大きな収益源となる賃料を確実に徴収するため、
- 預り金精算方式・・・テナントの売上金を毎日回収し、売上保率に応じた賃料を差し引いて、月数回に分けてテナント運営本部に振り込みをする方式のこと。
を導入しています。
この、預かり金精算方式が導入されているテナント店では、日々の売上金と共に売上実績データを運営本部に提出しなければいけませんし、正確性も求められます。
そのため、ジャーナルの電子化によるペーパーレスや、
- 現金
- 電子マネー
- クレジットカード
- 共通商品券
など、支払い種別ごとにデータ化できるよう、パソコンやPOSなどのICTツールを活用した、データ管理システムの構築を検討すると良いでしょう。
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また、FCテナント店では併せてFC本部への売上報告もしなければならず、より管理するデータの種類や量も増えてきますが、この場合FC本部が売上管理および、その報告システムをすでに築いており、それを加盟店に提供している場合が多くなってきます。
FC加盟店はテナント店でも路面店でも、確かに提供できる商品・サービスやその価格設定に限りがあるなど、経営方針の自主性が乏しいというデメリットがあります。
しかし、テナント運営に必要となるシステム構築にかけるコストを抑えられるという、FCテナント店ならではの強みもあります。
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- 【ここがポイント!】
~立地や集客力の良いテナントが必ずしも大きな利益を生むわけではない~ -
いたって基本的なことになりますが、知名度があり集客力も抜群で、交通アクセスがいい商業施設にテナント出店した方が、売上を伸ばしやすいのは当然です。
しかし、そういった場所は売上保率や最低保証売上額も高いのが普通で、売上がアップしても純利益が伸び悩んでしまうことがあります。
純利益を上げるには、売上の向上とともに経費の削減も必要ですが、テナント店の場合賃料に店舗管理費や光熱費が含まれているため、数ある経費の中でも目に見えて削減できるのが、「人件費一択」になってきます。
ですので、許されている範囲内で「特売セール」などを企画して売上アップを図るとともに、構築した売上管理システムのデータを分析して、アイドルタイムにおける人員配置を適正化し、賃料以外の経費を削減していくよう心がけましょう。
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まとめ
テナント店は、運営方針に制限が設けられていたり、売上保率と最低保証売上額の存在により、利益が頭打ちになってくることがあります。
とはいえ、得られるメリットは大きく、ICTツールを活用したシステム化ができれば、店舗運営を安定させることもそう難しくありません。
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ここがまとめポイント!
- 賃貸契約での出店には、商業施設のテナント出店と路面出店2パターンがあり、それぞれ運営面で違いがある。
- 個人経営の路面店は、店舗運営の自主性は高いものの、マーケティングによる集客などをすべて自身で行わなければならない。
- テナント店やFC店は運営方針について、出店している商業施設の運営本部や、加盟するFC本部から、一定の制約が課せられることがある。
- 路面店の賃料は、「家賃」として固定であることも多い中、テナント店の賃料は固定ではなく、「売上保率」と「最低保証売上額」で決定される場合は流動的になる。
- テナント店では、売上がアップするとともに賃料も上がり、結果として純利益が伸びないこともあるため、ICTツールの活用による売上管理システムを構築し、人材配置の適正化などといった業務改善を進めると良い。
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- 【正解】3:同じ賃貸契約なので、路面店とテナント店に運営上の違いはほとんどない。